インストラクターとして現場に立ち始めたものの「生徒さんと関わるのに緊張してうまく話せない」「なかなか距離が縮まらない」など、悩んでしまうことはありませんか?「経験を積むしかない」と言われることも多いですが、それには何年も時間が掛かってしまいますし、むしろ長い時間を掛けたからと言って相手とうまく関われるようになるという保証もありません。大事なのは、コミュニケーションのコツ。話し方や聞き方を少し工夫するだけで、今のあなたのコミュニケーションが劇的に変化するかも。臨床心理士として日々カウンセリングを行っている筆者が、今日から使えるコミュニケーションのコツをお伝えします。
南 舞
話を聞けている人は意外といない?
話すことや聞くこと自体は誰もができるし、そんなに難しいことではありません。しかし、家族・友人・上司など身近な人たちとの人間関係のトラブルの大半は会話が原因になっていることが多いのです。それは、ただ一方的に話したり、聞くだけに徹していたり、「自己流」のコミュニケーションをしている人が多いから。例えば、「困っていたからアドバイスをしたのに相手はやってくれなかった。」とか「自分の思っていることを相手に伝えられない。」など思い当たる人は、もしかしたら自分と相手の中に温度差が生まれるようなコミュニケーションをしているのかもしれません。
今日からできる!コミュニケーション上手になる3つのコツ
人間関係を円滑に進めるには、聞くことと話すことのバランスが取れていて、相手と対話をすることがポイント。話を聞くことが仕事である心理カウンセラーも、ただ相手の話を聞いているのではありません。相手の話したことに対して効果的に質問を重ねる、対話の中でカウンセラーが感じたこと相手に伝える、などアクティブリスニングと呼ばれる訓練を行ってきているのです。
たくさんの技法やスキルがありますが、その中でもインストラクターが使えそうなコミュニケーションスキルを3つお伝えします。
1.アドバイスは不要!良いことを言おうとしない
カウンセラーたちが気を付けていることの一つが「アドバイスをしない」「良いことを言おうとしない」ということです。インストラクターとして生徒さんの前に立っている以上、「ちゃんと質問に答えなきゃ!」「納得してもらえるような良いこと言わなきゃ!」と思いがち。でも、実はそれほど相手の心に響いていないことも多いのです。
相手の話を聞くときに大切なことは、相手が結果的に「私の話を聞いてもらえた。」「私の考えていることを理解してもらえた。」と思ってくれることが大切。
新米インストラクターだと生徒さんから質問を受けた時に、分からないこと、答えられないことも多いはず。そんな時は肩肘張らずに、生徒さんの話を引き出して、聞き側に回ることも一つ。もしかしたら、その時感じた不安な気持ちや焦りを聞いてほしかっただけかもしれません。
また、「上手に話そう」とか「良いことを言おう!」と思うと、緊張が高まって自分のことで精いっぱいになってしまいます。コミュニケーションは一方通行ではなく、相手があってのもの。相手が受け取ってくれなければ意味がなくなってしまいます。ちょっと沈黙があったり、うまく話せなくても良いので、まずは相手と会話でつながるということを意識してみると良いと思います。
2.相手の呼吸のリズムに合わせて会話をしよう
会話をするときのスピードは人それぞれ。早い人もいれば遅い人もいます。なので、相手の会話のスピードに合わせて話すようにすると話がしやすいと言われます。これは「チューニング」というカウンセリングのスキル。コツは相手と呼吸のリズムを合わせるようにすることです。
生徒さんが話しているのに、話を途中で遮って自分の話をしたりしていませんか?また、気づいたら自分の方が話していることってありませんか?クラスの中でも行っているように、ちょっと一呼吸おいて相手の会話のペースを観察してみると良いでしょう。
また、相手の声のトーンに合わせるのも一つ。相手の口癖や会話の特徴がつかめて、それをマネられるくらいになると、会話に心地良さが生まれてくるかもしれませんね。
3.相手からの良い報告は一緒に喜ぼう!
聞く技術は、悩みや相談ごとを聞くときだけに必要なわけではないのです。心理学の一つ「アドラー心理学」では、本音を言いやすい関係を作るには「勇気づけ」が必要と言われています。相手から良い報告があった時に、その結果だけを喜ぶのではなく、結果を出すために頑張った「努力」を一緒に喜ぶことが大切なのです。
例えば、ヨガインストラクターであれば、生徒さんが身体のこと、自分のことで悩んでいたのが良い方向に行ったとしたら、「それは○○さんがすごく頑張っていたからですよ!」「本当?私もその話が聞けてうれしいです」など、一緒に喜んであげると良いでしょう。生徒さんを始め、人間は他人に喜んでもらえるから頑張れる生き物です。ぜひ生徒さんの喜びは自分事のように喜んであげてください。
終わりに
ちょっとした「話すスキル」「聞くスキル」を意識するだけで、相手との会話は変わってくるはず。まずは自分ができそうなところから少しずつ取り入れてみてくださいね。