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男は仕事、女は家事という役割、なんてない。

ライフスタイル

大阪出身、滋賀在住の漫画家兼イラストレーターである吉本ユータヌキさんは、バンドの解散をきっかけに開設したブログで漫画を描き始め、それが仕事となり現在に至る。パパの目線で描くコミカルな育児漫画『おもち日和』が話題を呼んだ。一時期は会社に通いながら家族との時間を取り、漫画を描くといった生活で、睡眠時間が3時間ほどしかなかったことも。紆余曲折を経て見えてきた「家族のあり方」について、お話を伺った。

「僕の両親がそうだったんですが、父親が家事している記憶がひとつもなくて……。だから自分の中で、男は仕事、女は家事みたいな偏見を持っていたんだと思います。両親は離婚しているので、そういうところに原因があったのかもと思い自分の考えは改めなきゃと思って。それからは家事を妻に任せるという意識は持たないようにしています」

男は仕事、女は家事。古い概念だと言われるかもしれないし、はっきりとした役割分担になっていなくても、そういった考え方を、私たちは気が付かないうちに「当たり前のもの」としているのかもしれない。

話し合うことで、自分たちのスタイルが見えてくる

先入観のせいで、自分はプレッシャーを感じ、パートナーは仕事をしたくてもしにくいストレスを抱えていたという吉本さん。この問題をどのように解決したのだろうか。

「2年くらい前に、妻から『働きに出たい』と相談をされたんです。仕事をする分、家事の負担が大きくなっても気にしないと。そこまで思い悩んでいたとは気付けませんでした。妻の言葉で、シンプルに僕と妻のやりたいことや描いていた夫婦像が違ったんだなと感じたんです。

僕は、家事は大切な仕事だと思っていましたが、妻にとってはまた違った考え方があったようでした。うちは、18歳の頃からの長い付き合いで、お互い相手に気を使って自分が何かをするタイプなんです。だから、勝手に相手の気持ちを推し量って、なかなか話し合いをする機会がなかったのだと思います」

「夫婦でしっかり話し合うこと」の大切さを語る吉本さん。話し合いにおいて、自分の気持ちが分からなかったり、二人の価値観や夫婦像が合わなかったりしたら、どうすればいいのか。

「実は1年ほど前に、落ち込んで漫画家をやめようと思ったことがありました。そんな折、事務所の代表からコーチングの先生を紹介されて、悩みを打ち明ける機会があって。コーチングの指導に、自分の気持ちが分からずモヤモヤしている時は『今』にフォーカスすることが大事だというものがあります。モヤモヤして煮え切らない状態って、知らない間に固定観念や過去にとらわれていたり、人と比べていたりする時が多いんです。だから、『今、自分がやりたいこと』だけにフォーカスして考えるといいんじゃないでしょうか。

お互いの意見が対立することは、共同生活をしている中でよくあります。そんな時は、表面的な『こうあるべき』というところだけを見ないで、『どうして自分はそう思うのか?』という気持ちに着目することをおすすめします。根本にある気持ちを探ると、『子どものため』とか共通点を見つけられると思うんです。そこから、だったらそれを解決するためにどうしたらいいのか?ということを考えてみるのが良いと思います」

社会の常識は、別に悪いものではない。しかし、それに対して「では、自分たちはどうしたいのか」をしっかり話し合うことが大切なのではないだろうか。

大事なのは「自分の気持ち」。漫画だって、編集の望み通りに描く必要はない

現在は、週1日会社に行って広報の仕事をし、残りの4日は、9時から18時まで漫画やイラストの仕事、それ以外の時間と土・日曜を家族の時間に充てているという吉本さん。子育て生活の中で見えてきたものについて聞いてみた。

「子どもたちとの生活は、たくさんの制限もありますが、彼らが自分たちを必要としてくれているんだなと感じられるような瞬間があって、とても幸せで充実しています。仕事に関しては、これまでの生活で『人と話をすること』『ふたをしてしまっている自分の気持ちに気が付くこと』の大切さを実感できるようになりました。

コーチングの先生と話すうちに、自分の悩みが他人と比べ過ぎていたり、編集さんの期待に応えようとし過ぎていたりしたことが原因だったのではないかと気が付いて。自分が本当にやりたいことにふたをしていたんだと感じました。そこから、他人の期待に応えるんじゃなく、自分が描きたいものを描こうと割り切れるようになりましたね」

父親の育休推進などについては、「どんな人がいてもいいと思うので、強い興味はなかった」と言う吉本さん。「でも今は、誰かが『こんな選択肢もあるよ』と発信することで、いろんな価値観を受け入れられる社会になるんじゃないかな」と語る。

自分の気持ちと向き合って、それを家族に伝えて、自分たちらしい生き方を探していく。シンプルだけど、とても難しいことだ。独り善よがりではいけないし、相手を尊重しなくては本質的な解決にはならない。しかし、そういった困難を乗り越えてこそ、本当の意味での家族をつくっていけるのではないだろうか。

育児をしている、これからする方に伝えたいのは、子どもたちとできるだけ多くの時間を過ごして、写真でも動画でもいいので撮りまくってほしいということ。子どもたちとの毎日は、本当に密度が濃い日々の連続なので、「こんなことあったっけ?」って忘れてしまうケースも多いんです。いっぱい思い出づくりをして、何かしらの形で残してくださいね!
取材・執筆・撮影:立岡美佐子

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