岡山の倉敷美観地区でひと際存在感を放つ建築が「大原美術館」です。世界から収集された、古代から近現代の美術の傑作が数多く並びます。見どころと話題の絶えない、各館の魅力をレポートします。
「大原美術館」は世界に誇る日本初の西洋美術中心の私立美術館
「大原美術館」は、昭和5年(1930)に倉敷の実業家・大原孫三郎が日本初の西洋美術中心の私立美術館として設立しました。本館、分館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館(外観のみ見学可)から成り、西洋美術の代表作や日本の洋画・彫刻・工芸品など、国や時代を超えた約3000件もの作品を収蔵・展示しています。
※分館は2024年6月現在休館中。児島虎次郎記念館のグランドオープンは2024年度末予定。
《和服を着たベルギーの少女》児島虎次郎
「大原美術館」の優れた作品を収集したのは、洋画家・児島虎次郎。大原孫三郎は虎次郎の才能と人柄を認め、3度のヨーロッパ留学を経済的に支援し、虎次郎が提言した西洋美術作品の収集も承諾。それらの作品と虎次郎の作品を公開するため、美術館を創設しました。
古代ギリシャ・ローマ神殿のような外観が象徴的な本館は、開館当時の姿を留めているそう。館内2階にある丸窓など、建物を設計した建築家・薬師寺主計(やくしじかずえ)のデザインセンスが光る意匠も見逃せません。
本館で必見の世界的名画3選
《受胎告知》エル・グレコ
虎次郎が買い付けた世界的な名作の数々が並ぶ本館のなかでも、“日本にあるのが奇跡”といわれるのが、《受胎告知》。聖母マリアとキリストの受胎を告げる大天使カブリエルが、まさにすぐそこにいるかのよう!スペイン三大画家の一人、エル・グレコの作品は当時、虎次郎が孫三郎に相談のうえ購入するほど高額だったそう。二人の情熱と財力がなければ、日本で見られなかったかもしれないと考えると感慨無量です。
《睡蓮》クロード・モネ
工芸館横の池に咲く睡蓮。見頃は5月中旬~10月上旬
「大原美術館」の《睡蓮》には、当時すでに有名だったモネの自宅を虎次郎が訪れ、直接譲り受けたという逸話が!モネが用意した複数の絵から虎次郎がセレクトした1枚です。遠くから見ると水面に映る雲や空が描かれた繊細なタッチが特徴的。工芸館横の池では、モネの庭から株分けされた睡蓮を見ることもできますよ。
《かぐわしき大地》ポール・ゴーギャン
鮮やかな色彩が目を引くのは、フランス出身のポール・ゴーギャンが初めてタヒチを訪れた際に描いた代表作。文明に汚される前の南国の生活にふれることで芸術への活力を得ていたゴーギャンの大胆な色使いは没後認められ、20世紀の芸術に影響を与えたそう。
本館にはまだまだ多数の名画や、オリエント・エジプトの古美術など必見の作品が並びます。
工芸・東洋館には民藝運動にゆかりのある作家の作品や東洋の古美術品がずらり
工芸・東洋館は、江戸時代の米蔵だった建物を染色家の芹沢銈介のデザインで改装したもの。倉敷ならではの白壁の蔵が中庭を囲む一角に、赤い壁の蔵が立つのが、何ともおしゃれです。
工芸館では、河井寬次郎や棟方志功といった6人の民藝運動にゆかりのある作家の作品を部屋ごとに展示しています。木レンガの床や倉敷ガラスのステンドグラスなど、建物にも注目してみてください。東洋館には、中国の石仏などが並び、見ごたえたっぷり。
ミュージアムショップでアートグッズをゲット
「そえぶみ箋」各330円
芸術を満喫した後は、ミュージアムショップで、アートなグッズをおみやげに。こちらの「そえぶみ箋」は、大原美術館の建物や所蔵する名画の人物があしらわれたオリジナル。ひと言メッセージを伝えるのにぴったりのアイテムです。