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都会のこどもが過疎地の古民家にきたら、近所から野菜が届いた。「あてにしない」から起こる"豊かさの循環"

ライフスタイル

Akiko Kobayashi / OTEMOTO

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Akiko Kobayashi / OTEMOTO

「地域まるごと子育て縁」の発端は、新型コロナウイルスの感染が広がり、全国一斉休校になった2020年3月でした。

学童保育が利用できなくなり、こどもたちが安全に過ごす場所がないことを知った住民たちが、一時預かりを始めました。休校期間中の集まりを「みそ汁学校」と名付け、近所の人たちの力を借り、遊んだり勉強を見合ったりして過ごしました。そのうち米や野菜や醤油を届ける住民が現れ、集まった人たちみんなでメニューを考えて昼食をつくりました。

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この体験がきっかけとなり、ボランティアとして関わっていた学生2人が保育士資格などを取得し、2022年10月に地域交流型の預かり保育として事業化。地域の人たちとの関わりを続けながら、岩田さんのように市外在住の人が一時的にこどもを預けたいというニーズにも対応しています。

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拠点としている古民家は、急な階段や土間があり、温度や湿度の変化が大きいため、保育施設としては不向きともいえます。食事も地域の人たちが提供するなど、一般的な保育園とは環境が異なります。

地域まるごと子育て縁マネージャー(取材当時)の有路登志紀さんはこう話します。

「日常にある危険はこどもにとっては学びの機会でもあります。ここにはその危険も含めた環境でこどもを育てたいという人たちが集まり、その思いに共感する人がこどもを預けています。人と人とが頼り頼られる、有機的な関わりを最も大切にしています」

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頼るための「余白」

有路さんは、こうした性質のプロジェクトに地域の人たちが関わりやすくするためには「余白」が重要だといいます。

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紐を使う手づくりのおもちゃ。モンテッソーリ教育を取り入れている
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

例えば給食は、基本的にはスタッフが調理する手はずになっており、献立も決まっています。それでも地域の人から手伝いの申し出があれば、献立を増やしたり、こどもと一緒に調理してみたりと、プラスアルファのことができるととらえています。「おせっかい」をいつでも受け入れる体制にしている一方、あてにしている仕組みではないのです。

「ギブアンドテイクというわけでもありません。得意分野を生かして人に頼られることで生きがいが生まれたり、人に頼ることで孤立を防げだりと、地域全体で豊かさが循環することを目指しています」(有路さん)

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地域まるごと子育て縁の有路登志紀さん(左)と井上敬介さん
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学生ボランティアとして関わり、「地域まるごと子育て縁」の立ち上げメンバーになった井上敬介さんは、「地域の人たちはこどもの成長を一緒に見守ってくれる心強い存在」だと話します。

「おじいちゃんの世代にあたる人が『こどもに負けないように自転車をこぎ始めて、今日は6キロ走った』と話したり、昔の遊びを思い出して教えてくれたりすると、地域の人たちの健康にもつながっていると感じます」

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こども用の椅子は牛乳パックを再利用して手づくりされている(左)

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