今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ラディカルな抵抗を
今週のかに座は、強いられた共同性から脱け出すための方途を探っていこうとするような星回り。
ハンナ・アーレントの『イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告―』は、元ナチの戦犯で、ユダヤ人撲滅作戦において数百万人におよぶ強制収容所への移送を指揮したアイヒマンの裁判をみずから傍聴し、書き上げた大作ルポでしたが、大きな議論を呼び、自身もユダヤ人であるはずの彼女の語り口が非難されました。
文芸批評家の加藤典洋は『敗戦後論』に収録された「語り口の問題」の中で、「共同性を殺すには共同性の単位である『私』の場所から、裏の闇である私となって語るしかない。私の語る言葉とは何か。私性は世界から奪われた存在にほかならない。私は言葉を奪われている。私に残されているのは語り口なのである。」と述べています。
あなたもまた、自身の取るべき「語り口」ということをひとつ考えを巡らせてみるといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
路傍の石
今週のしし座は、中心であると同時に周縁であるような勘所をつかんでいこうとするような星回り。
『絶えず人いこふ夏野の石一つ』(正岡子規)という句のごとし。
ともすると、しし座というのは人の世においては中心を模索してしまうところがあるのですが、自分が立っている「中心」もまた宇宙にとって数ある「周縁」に過ぎないのだということを、ゆめゆめ忘れずにいたいものです。
あなたもまた、自分が「一つの石」になったつもりで過ごしてみるといいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
怠けるが勝ち
今週のおとめ座は、自身の「官僚性」をいくらか解きほぐしていこうとするような星回り。
幼児虐待に関する研究で知られる心理学者アリス・ミラーは、愛情があるかのように偽装されていても実際には愛情が欠如しており、子どもが無条件には決して受け入れられずに、何らかの(大抵は親にとって都合の)「よいこと」をしたときにだけ、「生存キップ」が渡されるような家庭に「才能のある子」が出現するのだ、という事実を明らかにしました。
学際的な研究で知られる安冨渉は、ミラーの「才能のある子」という概念との出会いを通して、「『自分に対する裏切り』を引き起こすコミュニケーション過程の全体を『魂の植民地化』と捉え、そこから離脱する方向を探し求めるようになった」のだそう。
あなたもまた、魂の脱・植民地化をはかっていくことがテーマとなっていきそうです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
人間中心主義をずらす
今週のてんびん座は、不気味な不自然さを日常から取り払っていこうとするような星回り。
『虹立つやとりどり熟れしトマト園』(石田波郷)という句のごとし。多少傷がついていたり、皮が少し破れているくらいが、十分に成長して熟れた証しなのだということは人間世界にも通底してくるはず。
昨今のように経歴の穴だったり、悪評がないことを基準に人の善し悪しが論じられるような世の中では、本当の意味での「成熟」の機会はますます減っていく一方でしょうし、おのずと文化というものもまた衰えていくのではないでしょうか。
あなたもまた、破れてもいい、傷ついていても、「とりどり」の眺めをこそ肯定していきたいところです。