今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
きっと何かにうたれる
今週のかに座は、みずからの考えや意識のあり方が境界そのものへと変わっていくような星回り。
思想家の吉本隆明の最晩年のインタビューをもとに作られた『フランシス子へ』において、ふっと親鸞について語り出している箇所がありました。
親鸞は比叡山で学僧としてたいへんに学問を積んだ人でしたが、やがて自分の実感でつかむことができなければ意味がないと痛感して、庶民のあいだで「浄土」の教えを説いていた法然の弟子となりましたが、やはり浄土があるということさえ疑わしくなって、信と不信の境界に踏み出してしまったのですが、そうして最後にたどり着いた場所が先の「うず潮」でした。
あなたもまた、自分自身が「うず潮」そのものとなっていけるような場所へとできるだけ身を置いていきたいところです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
冥冥なる人間として
今週のしし座は、豊かな孤独の世界へと踏み込み、膨らませていこうとするような星回り。
『虚子一人銀河と共に西へ行く』(高浜虚子)という句のごとし。俳句に限らず、絵画や彫刻の世界であれ、舞踊や宗教の世界であれ、何事かを極めようとする気概の強い人であればあるほど、孤独感というのもどうしても強くなるものです。
しかしそれは物寂しいだけの世界では決してなく、心の奥底のところで「あっ!」とかすかな声があがるのを喜びをもって聞き届けていく豊かな体験を伴っていたはず。
あなたもまた、心の生活の記録をはてしなく推し進めてみるといいでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
自己をわするるる
今週のおとめ座は、人としてもっと自由な在り方を追い求めていこうとするような星回り。
鎌倉時代に踊り念仏を広めた一遍上人は「捨てることを捨てよ」と説きましたが、ほぼ同時期のドイツに生きた大神学者で「ドイツ神秘主義の源泉」と言われるマイスター・エックハルトもまた<内なる貧しさ>という言い方でそれに相通じる教えを説いていました。
エックハルトによれば、どんなに懺悔や祈りや徳の修練を行って「聖者」と呼ばれるようになったところで、まだ本人のなかに神に愛されようという意志がまだ残っているかぎり、「外なる貧しさ」にとどまるのであり、それは「内から見れば愚かなロバでしかない」のだとまで言うのです。
あなたもまた、生活のなかでわずかでも自意識から離れ、意志を捨てられる瞬間を見つけ、一秒でも長くそれを感じられるようにしていきたいところです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
偶然性の詩学
今週のてんびん座は、「なんでわざわざそんな地味で、無意味に思えるようなものに注目したのだろう?」と思われるくらいの風景を黙って指示していくような星回り。
『秋晴の空気を写生せよといふ』(沢木欣一)という句のごとし。
作者の場合、おそらく言われたことがいま一つピンと来ていなかったのでしょう。真意をつかむべく、どこか考え込んでいるような「空気」を醸しだしていることを感じとって、それをそのまま出すことが作品となっていったわけです。
あなたもまた、普通ならまず人が取り上げないような現実=自分事をひょいっと拾いあげてみるといいでしょう。