今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
会話地獄を生き延びる
今週のかに座は、自分の言葉を空っぽにして、思考を謙虚にしていこうと努めていくような星回り。
「なぜ、私が、いま苦しまなければならないのか。私が悪いというのなら教えてくれ」。
突然の災難によって何もかも失ってしまった苦悶のただ中で、もっともらしい言葉をかけてきた友人たちに、こう訴えたのは旧約聖書の『ヨブ記』の主人公ヨブでした。しかし、現代日本社会においてもこうしたヨブの言葉に共感する人は少なくないように思います。
あなたもまた、程度こそ違えど、こうしたヨブの物語に示されたイニシエーションをくぐり抜けていくことになるかも知れません。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
気安く、真剣に、遊ぶこと
今週のしし座は、日常のささやかな一瞬に文化を溶け込ませていこうとするような星回り。
『ことごとく全集にあり衣被(きぬかつぎ)』(田中裕明)という句のごとし。
現代社会では「働いていると本が読めなくなる」という嘆きがそこかしこで繰り返されている。余暇の喪失、時間の細切れ化、デジタル情報の洪水など、いずれも「全集」のようなぶ厚い書物を手にとる時間とは相容れないものばかり。この句は、そうした現代社会の風潮に対する静かなるアンチテーゼとも言えるかもしれない。
あなたもまた、「読むこと」と「働くこと」を二項対立させる風潮への違和感を、みずからの行動をもって消化していきたいところ。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
身近な自然をつかむ
今週のおとめ座は、「人為」の迷宮から抜け出して、思いっきり「自然」に突き当たっていこうとするような星回り。
現代人の特徴として、仕事であれ人間関係であれ、「ああ、自分は生きている」と確かに感じられるきっかけをつかむ機会がますます失われてしまっているということがあるように思います。例えば、思想家の内田樹とヨーガ指導者の成瀬雅春もまた、この「つかむ」力の低下ということと、いま日本が直面している状況の相関に着目していた2人でした。
2人の対談を収めた『善く死ぬための身体論』では、自然に直接触れることの重要性について語られています。
あなたもまた、まず身近な自然をつかみ、触れることの大切さや、その奥深さにあらためて回帰していくことがテーマとなっていきそうです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
神を建てる
今週のてんびん座は、ふと現われる神殿のような空白に身を入れていくような星回り。
『巣をあるく蜂のあしおと秋の昼』(宇佐美魚目)という句のごとし。この句のキモとなっているのが結びの「秋の昼」。春や夏の昼では、日射しが強すぎるし、冬の昼では光が硬質すぎて、沈黙が冷たさに転じてしまう。
ただ秋の昼だけが、光の柔らかさと空気の清らかさとを併せ持ち、世界にどこか神殿のような静謐さをもたらすことができる。そしてその中では、通常なら見過ごされる何の変哲もないものが聖なる徴(しるし)へと変貌していくのだ。
あなたもまた、一見すると何も特別なことは起こらないように見える昼下がりの静謐を、最も濃密で神聖な体験へと変容させていくべし。