『なかなか寝付けない』『眠りが浅い』等、睡眠に関する悩みを抱えていませんか? 日本では、一般成人の5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えているといわれています。多くの人が抱える睡眠に関する悩み。ヨガの実践が、その睡眠の質を上げることは広く認知されている事実です。ここでは『眠りのヨガ』といわれるヨガニードラを通じて、ヨガ的観点から睡眠の質を向上させていく方法をご紹介していきます。
井上敦子
疲れ・過緊張に気付いていますか?
睡眠に何かしらの問題を抱えている方は、身体や心に強い緊張を抱えていると考えられます。
・身体の疲労があるのに頭が冴えて寝付けない
・眠る直前まで思考が忙しく働いている
・夢の中でも仕事をしていたり、悩み事を夢に見たりする
・途中で何度も起きる
そんな悩みを抱えているとしたら、身体や心に緊張を抱えているサインです。私は週に8本ほどヨガニードラのクラスを行っていますが、睡眠に悩みを抱えている方がクラスにも多くいらっしゃいます。しかしながら、自分が『過緊張の状態にある』ということに気が付いていないケースがとても多いのです。そんなに疲れていないのに、、、とお話される方ほど、実は心身ともに緊張状態にあったりします。疲れを感じないほどの緊張状態にあるということなのでしょう。
ボディスキャンで緊張を解放しよう
では、どうしたらそこにある緊張に気が付くことができるのでしょう? ヨガニードラでは最初に、『ボディスキャン』という身体の細かい部分に意識を向けていく練習を行います。ヨガニードラの全ての過程を練習すると30分以上の時間が必要なので、まずはこのボディスキャンのみ行ってみると良いでしょう。『右足の親指を意識する、次に人差し指、薬指、中指...』といった具合に、日常生活ではほとんど意識することのない身体の細部に意識を巡らせていく練習です。
身体の細かい部分に意識を向けると、気が付いていなかった緊張に出会うことあります。頭の内側の重たさに気が付いたり、胃の中の不快感に気が付いたり、腕から力が抜けないことに気が付いたり。思った以上に疲れている、と気が付くこともあるかも知れません。そういった緊張に気が付けたら、次にその部分がリラックスしたと意識的に感じます。その過程を繰り返し行いながら丁寧に緊張を解放していきます。
リラックスをしたと感じるだけで緊張が解放出来るのか?と疑問に思われるかも知れません。しかしながら私たちの意識というのは大きな力を持っていて、意識が向いた方向に身体も心も向かうように出来ています。それは、意識と身体が離れている状態では発揮されない力です。そんな内なる癒しの力を感じることが出来るのは、ヨガニードラや瞑想といった繊細なヨガの練習がもたらしてくれる恩恵です。
ボディスキャンはどうやって行うの?
それでは最後に、ボディスキャンを実際に行う方法をお伝えします。
ボディスキャンを行う環境を整える
・落ち着ける静かな場所を選ぶ。
・朝でも日中でも夜でも、好きな時間帯でOK。
・寝落ちしてしまいそうな場合は室内を明るくする(なぜ眠らない方が良いのか?は前回の連載記事をご覧下さい)。
次に体勢を整える
・仰向けのシャバアーサナの状態で横になる、または背筋を伸ばし椅子に座る。
・身体の左右を対象にする。
・深呼吸を数回繰り返す。
ボディスキャンを始めましょう
・声のガイドがある場合は、そのガイドを聞きながら行います。眠らないように注意しながら、まどろみの状態を保ちましょう。アプリやYouTubeなどで気に入った音源を見つけることをオススメします。
・声のガイドがない場合は、意識を身体の細かい部分に意識を巡らせながら、そこがリラックスしたと感じてみます。
例)右の手の親指に意識を向ける→親指がリラックスしたと感じる。薬指に意識を向ける→薬指がリラックスしたと感じる、、、といったように、意識を身体の一つ一つの部位に巡らせながら全身をくまなく観察しリラックスさせます。リラックスしている、と意識的に感じることがポイントです。厳密な決まりはありませんが、手の指、足の指、顔のパーツは特に細かく行いましょう。
10分から15分ほどの時間をかけて行う
・可能であれば10分~15分ほどの時間をかけて丁寧に行います。
・時間的に厳しい場合は、特に疲れを感じている部分を重点的に行うだけでも良いでしょう。
15年間の会社員生活を経てヨガ講師に転身。不眠症をヨガで克服した経験を持つ。リラックスが苦手だった経験から、ヨガニードラを通じてリラックスの本質を伝えるクラスを展開。週に8本のヨガニードラのレギュラークラスを持つ他、指導者養成講座やコラム執筆等ヨガニードラの普及に努めている。Instagram:@yoga_atsuko.inoue