【依存体質】な人に遭遇したことはありませんか? 引き寄せてしまわないための注意点、依存体質な人に遭遇したとき、付き合わなければならないというときに知っておきたい対処法を臨床心理士である筆者がお伝えします。
南 舞
あなたの周りにこんな人いませんか?
・どんなことでもいちいち確認してくる人
・早朝、深夜、時間を問わず自分の都合で連絡してくる人
・自分はそうでもないのに、グイグイと距離を縮めてくる人
このような行動を取る人たちは【依存体質】があると考えられています。もしあなたが「よくこういう人と遭遇する…」という感覚があるのであれば、もしかしたら無意識に依存体質の人を引き付けているのかもしれません。
依存体質とは?
アメリカの心理学者であるホーマンズが提唱した【社会的交換理論】によると、人間関係はギブ&テイクの関係で成り立っていていると言われます。時には頼り、時には頼られてバランスを取っていくのですが、このバランスが崩れ、どちらか一方が相手に頼ってばかりになると、【依存】という関係が生まれます。
相手に頼る側になりやすい人のことを【依存体質】と言い、依存体質の人の言動や行動が度を越えてくると、頼られる方が段々と不快感を覚えるようになってくるのです。
依存体質な人の特徴は?
依存する人にもいろんなタイプがいますが、厄介なのが、本人自身が依存していることに気づかず、無意識に相手に依存しているタイプの人です。悪気はないのに、なぜ相手に依存してしまうのでしょうか。
①両親の過干渉によるもの
幼少期から、何かするごとに親が口を出し、その指示通りに従ってきた人が多いと言われます。親の指示通りに従うことが最善だと無意識に刷り込まれているため、自立心を妨げられてしまいます。そのため、成人してからも自分の判断に自信が持てず、常に不安を抱えていて、頼りやすい身近な人にすがりついてしまうのです。
②誰かと一緒にいたい気持ちが強い
依存体質な人は、誰かと一緒にいたいという【親和欲求】が強いのも特徴と言われます。根底にある感情は不安。不安の他にも孤独や緊張も巻き起こりやすく、それらの気持ちを自分の中で解消できないため、誰かと一緒にいることで解消しようとします。
また、公私の区別があいまいなのも依存体質な人の特徴で、SNSなどでしつこく友達申請をする、電話番号やメールアドレスを知りたがるというようなこともあります。
依存体質な人と付き合わないといけないときは?
頼られることはうれしいけれど、それが度を越えてベッタリ、依存的になってしまったら、それだけで付き合っていくのが苦しくなってしまいますよね。周囲に依存体質な人がいる時、どのように付き合って行ったらよいのでしょうか?
①親近感を高めないようにする
依存される人の特徴として、親切で相手を思いやる気持ちが強いという傾向があります。
相談を持ち掛けられたら一生懸命聞いてあげる、ある程度自分の時間を割いて1対1で会うなど、その親切心が依存体質の人を呼び寄せていることがあるかもしれません。「○○さんといるとなんだか最近疲れるなあ」と感じたら、依存され始めているサインかも。そういう時は物理的に距離を取るようにしてみると良いでしょう。また、第三者を巻き込んで、1対1のシチュエーションを作らないようにすることもポイントです。
②忙しそうに振る舞い、話しかけられる機会を減らす
依存されやすい人には【オープナー】と呼ばれる人も多いと言われます、オープナーとは、自分では意図していないのに相手の心を開いてしまう人のこと。
もし日常生活で、知らない人によく道を聞かれたりする人はオープナーである可能性が高いのです。オープナーは、全体的にリラックスした雰囲気があり、「自分のことを受け入れてくれそう」と思われるのが特徴です。なので、依存体質な人が話しかける隙を作らないように忙しく振舞うのも手です。
③「重い」「疲れた」は依存されているサイン
依存体質の人と接していると、「なんか話すと疲れる」「気持ちが重い感じがする」という感覚が出てきます。気持ちが重く感じるのは、依存体質の人は、自分の心の中の境界線を破ってどんどん入ってこようとするから。パーソナルスペースという言葉がありますが、人には他人との距離において、物理的・精神的に「ここまではOK」という境界線があるのです。「なんか重い感じがする」「なんか疲れる」と感じたら、それは心の境界線に入ってきているのかも。
依存体質の人を目の前にした時に、「重い…」という気持ちが浮かんできたとしても、「こんな理由があるから重く感じるのか」と知っておくことで、いつもより気持ちが軽く感じてきませんか?
依存関係に悩むことが多いと感じる人は、ヨガを生活の中に取り入れてみることも良いでしょう。ヨガを行うことで【中庸】の感覚が身に付き、依存体質の人の特徴やその人と関わる中での感覚がいつもより濃く分かるようになってきます。また、依存体質の人に巻き込まれている自分についての感覚も少しずつ感じられ、振り回されても、落ち着いてバランスの取れた心地よい自分の状態に戻れるようになることでしょう。依存体質についての心理学の知識と、それにどう自分が向き合っていくかをヨガの教えを通して、自分の中に理解できるようになると良いですね。
ライター/南 舞
臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」資格を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。