好きな人ってなぜかいい匂いがしませんか? ずっとかいでいたい、と思う女性は実は多いのではないでしょうか。実は、いい匂いと感じる相手は、遺伝子的にも相性がいいと言われています。この記事では、好きな人から「いい匂い」がする理由や、「匂い」を使って好きな人にアプローチする方法などについて、精神科医の髙木希奈さんに解説してもらいました。
髙木希奈
「好きな人ってなぜか『いい匂い』がする……」
「なぜかわからないけど、この人の匂いって好きかも……」
そう思ったことがある女性は実は多いのではないでしょうか。
では、どうして好きな人からいい匂いがするのでしょうか? いい匂いがする人は「相性がいい人」なんでしょうか?
さらに、「匂い」を使って好きな人にアプローチする方法についても解説します。
恋愛に「匂い」は大切?
スイスの生物学者クラウス・ヴェーデキント博士の研究によると、女性は自分と異なる遺伝子型を持つ男性の匂いに、もっとも引きつけられることがわかりました。
調査では44人の男子学生を集めて、2日間、昼も夜も同じTシャツを着てもらい、その後50人の女子学生にTシャツの匂いを嗅いでもらったのです。
すると、女子学生がもっとも心地よいと感じた匂いは、それぞれ配列のもっとも異なるタイプの遺伝子を持つ男子学生のものでした。逆に、もっとも嫌悪感を持った匂いは、それぞれと近いタイプの遺伝子を持つ男子学生のものだったのです。
女子学生が嗅ぎ取っていたのは、白血球に含まれる遺伝子の複合体である『HLA遺伝子』の匂いでした。男性はHLA遺伝子をフェロモンとして分泌していて、嗅覚が敏感な女性は、この匂いで相手の遺伝子の型が自分に合ったタイプかどうかをチェックしているのです。
ですから、相手の体臭を「いい匂い」「心地よい」「嗅ぐと落ち着く」と感じる相手とは、自分とはちがった、遠い遺伝子配列を持っていて、“遺伝子レベルで相性がいい”と言えます。自分の遺伝子と近い父親の匂いが、「嫌だ! クサイ!」と感じるのとは逆のパターンですよね。
これはなぜかというと、近親者との子どもは、両親が似たような遺伝子しか持っていないために、遺伝子の多種多様なバリエーションが生まれにくいです。そのため、さまざまなウイルスや菌などへの異物に対して免疫機構が働かず、妊娠しても流産しやすくなったり、生まれても免疫力が弱かったり、先天性疾患を持っていたり、虚弱体質の子どもが生まれる可能性が出てきてしまうからです。
逆に、自分とは遠い遺伝子を持った相手との子どもは、遺伝子にいろいろなバリエーションが生まれるため、それだけさまざまな異物に対しての免疫機構が多く働くため、身体の強い子になります。
ですので、恋愛だけを考えるとあまり匂いというのは重要でないかもしれませんが、その後の結婚や子どもを作ることを考えるのであれば、人間の本能である“種の保存”や“子孫の繁栄”という観点からは、相手の匂いはとても重要です。
ただ、その前に、あまりにも体臭が気になるし、嫌な匂いと感じる相手は、一緒にいるのも苦痛ですから、生理的に受けつけないかもしれませんね。
嫌いな匂いの人との恋はうまくいかない?
嫌いな匂いの相手と仮に結婚まで至ったとしても、前述したように、HLA遺伝子の型が近い(遺伝子的に合わない)カップルの場合、女性側の恋愛の満足度が男性と比べて低くなり、性行為でオーガズムを感じにくくなるという研究結果もあります。結果、妊娠もしづらくなるとも言えます。
また、こちらも前述しましたが、遺伝子のタイプが近いといろいろなバリエーションが生まれにくいので、妊娠しても流産しやすくなったり、生まれても免疫力が弱い子どもが生まれたりする可能性が出てきます。
そういう観点から考えると、匂いが合わない相手とは結婚には向かない、と言えなくはないと思います。こちらも前述しましたが、うまくいく・いかないの前に、ニオイが嫌いだと感じる相手は、生理的に受けつけないことが多いでしょう。
自分の匂いで好きな人にアピールするには?
女性の場合、いい匂いをさせようと思って、香水をつけすぎたり、ニオイのキツイ柔軟剤を使ってみたりしますが、これはNGです。
男性の中には、香水や柔軟剤の香りが苦手、という人も少なくなく、私の友人では、「デパートに行くと、香水や化粧品のニオイで気持ち悪くなる」という人もいるくらいです。
男性に共通して好感度の高い匂いは、シャンプーやせっけんの香り。これを嫌いな男性はいません。ですので、このような類いの香りのする香水や柔軟剤を少量つけるのがよいでしょう。あくまでもつけすぎはNGです!
それ以外の香りがする一般的な香水や柔軟剤も好き嫌いが多いので、好きな人の好みの匂いだったらよいのですが、はずれたら最悪です。「くさっ!!」と思われて、二度と会ってくれなくなる可能性もあります。それだけ匂いは重要です。
なぜそこまで匂いが重要かというと、匂いは鼻の奥にある嗅覚器で感知され、嗅神経を伝わり、大脳辺縁系にある嗅覚中枢で匂いを感じ取ります。大脳辺縁系とは、喜怒哀楽などの感情面をつかさどっているところで、ここに直接伝わるのは、五感の中で嗅覚しかありません。
心地よい香りを嗅いだだけで一瞬にして癒やされるのは、このためです。目隠しをして、匂いもシャットアウトして食べものを食べると、何を食べているのかまったくわからない、という実験結果も出ているそうですよ。
これだけでも、何だか嗅覚って重要そうですよね? 精神科でも、アロマセラピーを取り入れているところも多いんです。