秋は本を手にとってみませんか?
日もだんだん短くなってきて、お家で過ごす時間が長いときは、ゆっくり読書もいいですよね。「読書の秋」にちなんで、リラックスタイムや移動時間に読める、おすすめ本をご紹介します。
あまり本を読まない人や、最近活字離れしがちな人もスムーズに本の世界に入っていける、分厚くなくて文体も軽めのものを選びました。秋のリラックスタイムに読んでみてくださいね。
読書の秋のおすすめ本
西の魔女が死んだ/梨木香歩
中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも…。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。
ハーブや動物が身近にある『魔女』の丁寧な暮らしはまさに理想のスローライフ。おばあちゃんと過ごす中で、生きる力を取り戻していくまいの姿に勇気づけられます。人生に疲れたときに読みたい一冊です。
イニシエーション・ラブ/ 乾くるみ
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説―と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。
ふたりの男女それぞれの視点で繰り広げられるほろ苦い恋の物語。恋に抱く幻想と現実のギャップは、失恋したことがあるなら絶対共感できるはず。ミステリー小説風の叙述トリックは、新しい読書体験を与えてくれます。
コットンが好き/高峰 秀子
「いつか私がこの世から片づいてしまったあとも、これらのものは、どこかの誰かの手に渡って、また新しい主人のために生き続けていくだろう―」。飾り棚、真珠、手燭、浴衣、はんこ、腕時計、ダイヤモンド…これまで共に生きてきた、かけ替えのない道具や小物との思い出を、愛情たっぷりに綴った名エッセイ。待望の復刻版。
戦前から子役、そして女優として活躍した日本の名女優、高峰秀子が思い入れのある品物について綴ったエッセイ。その目利きと軽やかでユーモアのある文体は、心地よく読み勧められます。物を大事に使いたくなる本。
センセイの鞄/川上弘美
センセイ。わたしは呼びかけた。少し離れたところから、静かに呼びかけた。
ツキコさん。センセイは答えた。わたしの名前だけを、ただ口にした。
駅前の居酒屋で高校の恩師・松本春綱先生と、十数年ぶりに再会したツキコさん。以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは列車と船を乗り継ぎ、島へと出かけた。その島でセンセイに案内されたのは、小さな墓地だった――。
40歳目前の女性と、30と少し年の離れたセンセイ。せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。切なく、悲しく、あたたかい恋模様を描き、谷崎潤一郎賞を受賞した名作。
大人になってから再会した高校の教師との恋。ものすごい年の差の上、センセイはすでに老後を送る身。ふたりの恋模様は、不器用で、だけど穏やかで、なんだか温かい。せつなくてキュンキュンする恋愛小説です。
銀の匙/中勘助
土の犬人形、丑紅の牛―走馬燈のように廻る、子供の頃の思い出。それは、ひっくりえかした宝石箱のように鮮やかに彩られている。誰の記憶の中にでもある“銀の匙”。その永遠なるものを素材にした、永遠の文学を貴方の心に届けます。
大正から昭和にかけて活躍した詩人、中勘助が自身の幼少期の思い出を元に書いた自伝的小説。繊細な文体と情景豊かに描かれる子供の目から見た世界は、自分も体験したことがあるように錯覚させるほど。美しい日本語を読みたいときにおすすめ。