今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
気持ちのよい別れのために
今週のかに座は、「歯切れよく区切り目をつけていくような星回り」。
「火の山の裾に夏帽振る別れ」(高浜虚子)という句の前書きには「とう等焼岳まで送り来る」とあります。焼岳(やけだけ)は飛騨山脈の長野県と岐阜県にまたがる活火山であり、作者はそこで句会ないし吟行を催していたのでしょう。
「別れ」といっても、この場合はどこか楽しげなものであり、広々とした山すそで、手を振って別れを惜しんでくれる仲間の姿を脳裏に焼き付けているのかもしれません。
今週のあなたもまた、何をもって「やるべきことはやった」と言えるのか、改めて問われていくことになりそうです。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
種まきと稲妻
今週のしし座は、「二つの世界のはざまで、伝えるべきことを伝えるべく、せっせと仕込みをしていくような星回り」。
鉄血宰相として知られ、19世紀ドイツ一帯をまとめて統一を実現させたビスマルク。彼には、鉄血宰相としての重要な判断は自分が考えて決断したのではなく、「自分の中のもう一人の男」がしたという非常に興味深いエピソードがあります。
つまり「私が考えるich denke」という時の“考え”とは自分が意図的に案出したものではなくて、まるで「稲妻が走るes blitzt」ように自然と思い浮かび、時にはその内容に自分自身でも戸惑ってしまうような代物だったという訳です。
今週のあなたもまた、これまでのみずからの決断は「私ich」ではなく「それes」がしたのだと自然に思えるくらい、意識を研ぎ澄ましていきたいところです。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
何を諦めるべきか
今週のおとめ座は、「ある種の予感に貫かれ、底まで引き込まれていくような星回り」。
「戦慄のかくも静けき若楓」(原民喜)という句は、広島に原爆が投下される数日前に詠まれました。
「若楓(わかかえで)」は初夏の季語であり、楓の木は少年時代から作者の夢想の対象として親しまれてきたもので、既にそこに漂う嵐の前のような静けさから、暗い予感を受けとっていたのでしょう。
予感や杞憂といえば、大抵は幻影として「気にし過ぎだよ」の一言で受け流れるものと相場は決まっていますが、作者の場合は、手で触れられるような夢のごとき、確かなリアリティを持っていたのかも知れません。
今週のあなたもまた、考えうる最悪のシナリオや展開からいかに目をそらさずに直視できるかが鍵となってくるはずです。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
抑圧の下の未知
今週のてんびん座は、「暴力ということへの抑圧を解放していこうとするような星回り」。
村上春樹は8作目の長編小説『ねじまき鳥クロニクル』において、“バットで頭をたたき割る”というかなり暴力な行為を意図的に取り入れました。
日本の場合は大戦争ということがあったため、かなり急進的に平和ということが推し進められます。また和というものに異様にこだわりすぎてきたために、暴力に関してかなり抑圧的になってしまい、暴力=悪ということが固定的に捉えられるようになってしまいました。
ただ暴力の本質にあるものは、狩猟であれ採集であれ農耕であれ生き延びるためには必要であり、そういうものは本来誰しもが持っている訳で、それを完全に失ってしまえば単なる“いいカモ”なんです。
今週のあなたもまた、ただ暴力というものを「こういうものですよ」と説明するのではなく、自分なりの人生物語のなかで、その発露を模索していくことがテーマとなっていくでしょう。