仕事でもプライベートでも、相手に言われたことに対してついカチンときてしまって、その気持ちがおさまらない。それが発端となり、人間関係がうまくいかない...そんなあなたに知ってほしい「心理的リアクタンス」について、ヨガインストラクターで臨床心理士としても活動する筆者がレクチャーします。知っておくと気持ちが楽になり、人間関係に変化があるかも。
南 舞
ヨガクラスに参加した時に、先生から「あなたって○○だよね?」と言われて、「え!違います。」って思わず反発した経験ありませんか?また、クラスの中で「○○しないとダメ!」というような言われ方をするとそのことがやりたくないと感じたり。日常生活の中でも、付き合っていた人に「別れよう」と言われれば「別れたくない!」と言って引き留めようとして事態が泥沼化するなど、相手から言われたことと反対の態度や言動を取ってしまう。まるで‘あまのじゃく’のようなこの現象は【心理的リアクタンス】と呼ばれています。
心理的リアクタンスとは?
リアクタンスとは【抵抗】を意味します。人は、相手から要求されたこと、発せられたことが自分にとって望ましいことだったり、当てはまることだったりしても、自分の自由を奪われる可能性を感じ、拒否的に反応してしまうことがあります。この心の動きのことを【心理的リアクタンス】と言うのです。
例えば、禁止されると余計にそのことが気になってしまったり、説得しようとすればするほど逆に相手との心理的な距離が遠ざかってしまうなど。人は自分の自由が奪われると感じると、自然と自己防衛(自分を守ること)をし、自分の意見や性質を曲げないようにするのです。つまり、相手に対して何かしてほしい時に、決めつけるような発言をしたり、自由を奪うような限定的な発言をすると、相手との心理的な距離が離れやすいということになります。
もし友人にヨガの良さを分かってほしいのになかなか分かってもらえない、自分のクラスになかなか生徒さんが定着しない、ヨガ以外でも人間関係がうまくいかないなど気になることがある人は、もしかしたら相手の心の中に【心理的リアクタンス】が起きているのかもしれません。
心理的リアクタンスと上手に付き合うには?
【心理的リアクタンス】は誰にでも起きうるもの。無くすことはできないけれど、自分の中でその性質を理解しておくことで、ある程度コントロールすることはできます。
1.無理に説得しようとしない
自分の思いを理解してほしいと思って説得しようと頑張るほど、相手は抵抗感が増してしまい、どんどん理解しあえない状況に。相手にわかってもらいたい時こそ、説得しようと必死になるのはやめましょう。
2.提案や質問の形で話をする
「○○しなさい!」「○○すべき!」と限定されると、自由を奪われる感じがして従いたくないと思うもの。もし日常のコミュニケーションで限定的な伝え方をしていると心当たりがあるのなら、「〇〇という考え方もあるけどどう思う?」と提案してみたり、「私は○○と思うけど、あなたはどう思う?」など疑問形にするとグッド。選択肢が増えると、自分の考え方を変えてみようと少しは思ってくれるかも?
3.相手の意見を尊重すること
もし自分の意見を一方的に言っていることが多いと感じているなら、まずは相手の意見を肯定してみて。「○○って思うんだね。」「そういう考え方もあるね。」など相手の意見に賛成してあげることで、「自分の意見を受け入れてくれた。」「自分の自由を奪われないだろう。」という安心感が生まれ、耳を傾けてくれるかもしれません。
終わりに
【人は自由を制限されそうになると、なんとかその状況を守ろうとして抵抗をする】という性質を理解しておくことで少し冷静に相手と向き合えるはず。ヨガのクラスではもちろん、夫婦・親子・職場・学校・恋人など日常生活での人間関係にも生かされることでしょう。お互いの自由を尊重できる関係を大切にしていきたいものですね。