今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
「当たり前」を取り外す
今週のかに座は、世俗的な在りようから一時的に抜け出していこうとするような星回り。
中国古代の二大詩人のひとりである杜甫の作品でよく愛誦されているものに、「酒債は 尋常 行く処にあり/人生 七十 古来稀なり」という七言律詩の一節があります。
もし杜甫の真意が「(七十まで生きることなど稀なのだから)今を精いっぱい楽しもう」という逆説にあったとするなら、冒頭の一節は現代人にとって、「(幸福を先送りする苦労とは別に)お前は今を生きているのか」という問いかけになっているのではないでしょうか。
あなたもまた、杜甫のように飲んだくれようとは言わないまでも、当たり前のように人生が続くという前提を取り払ってみるといいでしょう。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
衝撃と探索
今週のしし座は、自分より大きな存在に胸打たれていくような星回り。
『雨侵(し)みて巌(いわお)の如き大夏木(おおなつき)』(高浜虚子)という句のごとし。おもわず感動してしまうような言葉に触れ、ずしんとお腹に熱いものが宿った様子を描いたワンシーンとも捉えられるのではないでしょうか。
そうすると、おのずと句の眼目が、夏木の大きさにではなく、雨がいかに岩全体を黒々と変えてしまうほどに深くしみ込んでいるか、という点にあることも理解されてくるはず。
あなたもまた、いかに小さくまとまりがちな自己同一性を思い切って外していけるかが問われていくでしょう。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
欠損に惹かれて
今週のおとめ座は、自身の周囲に漂っている“いかがわしさ”の元に、目を向けていくような星回り。
潮田登久子という写真家が『冷蔵庫』という写真集を出しており、そこには57軒のありふれた家庭の冷蔵庫が映し出されています。些細な事実の積み重ねや組み合わせは、おそらくそこに暮らしている家族の外面以上に彼らの本質を表しており、往々にして外面とのあいだに何らかのギャップがあることに気が付かされるはず。
そしてそうしたギャップに漂うある種の“いかがわしさ”こそが、その家庭ごとの無意識的葛藤であり、面白味であり、写真集の眼目になっているわけです。
あなたもまた、自身の家の冷蔵庫と外面とのギャップに潜む魔物とおのずと視線があっていきやすいでしょう。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
生きざまの賦活
今週のてんびん座は、生命体としての生々しさを取り戻していこうとするような星回り。
『死火山の膚つめたくて草いちご』(飯田蛇笏)という句のごとし。その可憐で鮮やかな紅一点が目に飛び込んできたことで、死体としての山の冷たさや暗さが引き立てられつつも、今にも息を吹き返しそうなほどの臨場感のある“死にざま”を想起させます。
そしてそれは、事態が“生きざま”であっても同じことが言えるはず。みずからの日常に差し込む影や暗さや冷たさを排除する代わりに、いかにより効果的に配置していけるかということこそが生の実感の核心なのではないでしょうか。
あなたもまた、そうした配置の妙ということを探ってみるべし。