今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
治療をめぐる文脈
今週のかに座は、記憶の彼方にある文脈を、そっと身近に引き寄せていこうとするような星回り。
小俣和一郎の『精神病院の起源』によれば、日本の精神科病院の歴史には古代における光明皇后の悲田院や行基の布施屋などの病人救済事業を前史として、仏教者たちの尽力が大いに関わっているのだとか。
近代化を経た現代日本社会はいま、歴史的に形成されてきた豊かで複雑な「心の病い」の治療をめぐる文脈や記憶を徐々に失いつつあるのではないでしょうか。
あなたもまた、歴史的に埋もれつつある文脈と改めてつながり直してみるべし。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
回路と抵抗
今週のしし座は、見失ってはいけない気品と矜持を、心中に飾っていこうとするような星回り。
『冬薔薇や賞与劣りし一詩人』(草間時彦)という句のごとし。昭和29年の作で、作者はこのとき34歳。略歴にも「学歴なく、病歴多し」とあることから、会社での待遇も厳しいことの方が多かったのかも知れません。
たとえ同僚たちとの差を突きつけられようとも、一詩人として存在している誇りがあれば自分は胸を張って生きていける。そしてそのことを、目の前の冬薔薇だけは分かってくれるはずだと。
あなたもまた、腐ることなく花開いていく自分を胸に思い描き続けていくべし。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
ゾッとする
今週のおとめ座は、延々と続ける訳にもいかない現状を打破するための自己劇化を、引き起こしていこうとするような星回り。
「虚偽の生活を捨て、真実を追求するための脱出」として好んで語られる、アンダソン神話。今でこそ人生百年時代と言われていますが、20世紀前半のアメリカ人の平均寿命は50~60代後半であり、36歳はもはや晩年に差し掛かりつつある年頃でした。
その歳になってもまだ芽が出ないという焦りから、「わたしはわたしである」という一貫性を打ち棄ててしまうというアンダソンの行動は、一種の解離症状を呈した上での発作的な行いであり、見方によっては究極の居直りだったとも言えます。
あなたもまた、何らかの仕方でこれまで維持してきた一貫性を打ち崩す、大胆な方策に打って出ていくことになるかも知れません。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
冬空の一部となる
今週のてんびん座は、これまで思い至らなかった誰かの苦労や努力へ、目を向けていこうとするような星回り。
『天体が引き止めあへる冬と知る』(藤田哲史)という句のごとし。
夜が長くなり空気が澄み渡ってくるこの時期は、日没後に昇ってくるオリオン座から始まって、夜明けまでのあいだ12時間近くかけて冬の星座が夜空を半周していくのですが、それを天体同士が引き止めあっているがゆえの結果だと発想しているのです。
あなたもまた、身近な現実を支えていた水面下での営みに、きちんと応えていくことがテーマとなっていきそうです。