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「デザインの寿命を長くしたい」。掲示が終わった広告が、世界でひとつだけのバッグに

ライフスタイル

このときはワークショップの形式で、生地の洗浄や裁断、組み合わせるところまでを従業員に体験してもらい、できあがったトートバッグはすべての従業員に記念品として配りました。

実際に手を動かしたり、会社の歴史やストーリーを含んだものを身につけたりすることで、物質的にも残るものとなり、背景にある想いまでつないでいけそうな気がします。

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AXISのビルフラッグを再利用したトートバッグ。切り取る部分やハンドルの色、裏地がすべて異なる
蝉 semi 提供

「蝉 semi」をはじめた当時は、ターポリンの強度や耐久性が未知数だったため不安もありました。今は負荷がかかりやすい部分はあらかじめ補強したり、傷んだ部分は修理したりして、より長く使えるように工夫しています。

修理に出すと同じものがきれいになって戻ってくるイメージですが、「蝉 semi」ではバージョンアップさせることを意識しています。裏地を張り替えたり、ハンドルや金具を付け替えたり、生地を裏返して仕立て直したり。長く使うほど価値が高まっていくような修理を心がけています。

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3年ほど使用されたバッグなど。ターポリン独特のエイジングの風合いがある
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

手を加えるごとに価値を高めようと試みるのは、僕自身がつくることが嫌になりたくないからです。最近は、よりサステナブルな素材を求めて林業に関心を持ち、地方と東京を行き来しています。もっと技術を磨きたいとも思っています。

常にポジティブな気持ちでものづくりに向き合うには、やはり長く使えるものをつくっていきたい。時間はかかっても、妥協をしないでいたい。そうやってデザインを含む、ものづくりの価値を高める仕事をしていきたいです。

連載「職人の手もと」

「職人の手もと」は、ものづくりに真摯に向き合う職人たちの姿勢から、日々の仕事や暮らしに生かせる学びをお伝えするシリーズです。

職人の手もと
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OTEMOTO

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