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「おいしくないと、見えてしまう」 映画の裏側をつくり上げる飯島奈美さんの料理制作

映画の多くは日常を描いているものです。そして日常には必ず料理が登場します。日常をそのまま切り取ると、料理があり、食事をする場面があります。料理が料理として主張していなくても、自然にそのシーンに溶け込んで、なくてはならないものとして存在しているのが、映画の中の料理の理想的なあり方だと思います。

最近観た中では、韓国ドラマの「私の解放日誌」の料理のあり方が好きです。真夏に力仕事を終えた母親が、冷蔵庫の製氷皿からステンレスのボウルに氷をザザッと移し、おそらくインスタントであろうミルクコーヒーをペットボトルからドボドボと入れて一気に飲むシーン。さりげない描かれ方から生活感がリアルに伝わってきます。

まずストーリーがあって、そこに料理があるんです。なので私の仕事は、そこにあるべき料理を発想することと、その料理を与えられた環境でつくり出す調理科学のような技術の両方が求められていると思っています。

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Akiko Kobayashi / OTEMOTO

ーー家庭料理の定番メニューをテーマ別に紹介したレシピ『LIFE』のシリーズ最新作『LIFE 12か月』でも、ストーリーに合わせた料理やレシピが紹介されているということです。

重松清さんが書き下ろした12の物語をもとに私が料理とレシピを考え、その料理を試食した重松さんがさらに物語を調整するという共同作業でできあがった本です。

ある物語では、若さを過信して入院するはめになったお父さんを家族が気遣っています。退院後の献立は、ヘルシーだけれど見た目は入院前と変わらないようにしてお父さんを元気づけようと、高菜の漬物で味付けをしたお豆腐餃子にしました。

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『LIFE12か月』(飯島奈美 重松清 著)

LIFE12か月

Akiko Kobayashi / OTEMOTO

私の場合、むしろ縛りがあるほうがやりやすいんです。何でもいいから好きなものをつくってくださいと言われたとしても、やはり自分の中で設定を考えます。

『LIFE』シリーズで家庭料理の定番レシピを考えたときも、自分が好きなハンバーグではなく、人気店のハンバーグを食べ歩いて、世の中の多くの人が好きそうなハンバーグのレシピをつくりました。設定は、受験勉強を頑張るお兄ちゃんを応援する日曜日のお昼ごはんにしました。

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長く愛用している道具は機能性が高いもの
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

料理やレシピは朝目覚める瞬間に思いつくことが多いのですが、インプットも欠かせません。海外や日本の各地を訪れるとさまざまな料理を食べて、「ここで忙しく働いている女性はこんなものを食べているんだ」「この地方出身の人ならこんな料理をつくるだろう」などと考えながらレシピの参考にしています。

フードスタイリストというなりたい仕事に携わることができて、仕事が楽しくてただただ続けてきました。これからも、ひとつひとつの仕事を楽しみながら、丁寧にやっていけるといいなと思っています。

連載「職人の手もと」

「職人の手もと」は、ものづくりに真摯に向き合う職人たちの姿勢から、日々の仕事や暮らしに生かせる学びをお伝えするシリーズです。

職人の手もと
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OTEMOTO

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