ほとんどのものが家にいながら手に入る時代に、京都に行かなければ 手に入らないものがあります。それが創業200年を超える老舗「亀末廣」のお菓子。看板商品から予約必須の限定菓子など歴史を感じられる雅なお菓子をご紹介します。
細部まで見逃せない、未来の京都に残したい建物
地下鉄烏丸御池駅の出口を出て、一筋南の姉小路通り沿いを歩くと、北側に現れる建物。この歴史を感じさせる建物が、今回ご紹介するお菓子の老舗「亀末廣」です。創業は文化元年(1804)。その主屋は創業当初からの外観を残す総二階(さんかわらぶき)。隣に築100年以上の蔵を備えています。
看板の文字にある旧字体の「龜」の文字もさることながら、目を止めたいのは看板の額縁。干菓子の木型で囲まれています。かつて御所や徳川家からのお菓子の注文は、ほとんど毎回が特別注文。そのために、一度使っただけで用済みとされて残った木型を看板の額縁に用いたのだそうです。細部まで見逃せない箇所がいくつもあり、外から眺めるだけでも、老舗の深みを感じさせられますね。
経年で飴色に磨かれた木製のカウンター、天井の太い梁、額の文字などすべてに風格が漂います。
京都市民からの声で、京都の未来に残したい建物として推薦され「京都を彩る建物や庭園」に認定された、まさに京都の財産です。
献上菓子、著名人たちの来訪の記録に伺い知れる老舗の歴史
さらにディテールに目を凝らすと、金扇に亀の歩く立派な絵の額縁には商標登録の文字が。「農商務大臣伯爵井上馨」の文字から、明治21年(1888)から22年(1889)頃 のものでしょうか。
迎春のお菓子、「京の十二月」の見本飾りの後ろには、献上先として皇太子妃殿下、ローマ法王、タイ国王、エリザベス女王などそうそうたる名前が並びます。
「京の十二月」の見本の外箱を見せていただきました。中身は、一月御所、二月稲荷、三月圓山、四月都をどり、五月嵐山、六月苔寺、七月祇園祭、八月大文字、九月高台寺、十月時代祭、十一月高雄、十二月金閣寺。それぞれに京都の風景や行事を表したお菓子が詰まります。10月頃から予約ができ、年末の12月28日頃にお店で手渡しでのみ受け取れる、食べるのがもったいないようなお品物。さすがは献上菓子です。
<さりげなく掛けられた大福帳(江戸から明治時代にかけての商家で使われていた帳簿)。中を見せていただくと、各界の著名人の言葉が記されています。
京都の四季を四畳半に詰めた代表銘菓「京のよすが」
「京のよすが 四畳半」3900円
さて、そんな老舗「亀末廣」の代表銘菓といえば「京のよすが 四畳半」です。3サイズあり、一番大きなものは、四畳半のように区切った秋田杉の箱に入っていることから「四畳半」とよばれて います。
中のお菓子は季節や時期によって変わり、七月は祇園さん(八坂神社)の神紋入りのうちわや山鉾に吊られた駒形提灯を模したお干菓子が入ります。求肥に緑色のそぼろをまとった草の露、青梅の松露、白と水色の玉川はしぶきを表し、夏の風景を描きます。
「京のよすが 片開き」2600円
「京のよすが 六角」1300円
紙箱の片開きと六角。贈り物に四畳半を選んだら、自分用に片開きや六角を。という人も多いようです。自分でも食べてみたくなりますよね…。