今週のかに座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
野蛮を育てる
今週のかに座は、執着を断ち切って、ささやかかつ大胆な生まれ変わりを遂げていこうとするような星回り。
滋賀の聖衆来迎寺に収蔵されている仏教の六道輪廻の世界観を絵画化した「六道絵」十五幅の中に、「人道不浄相幅」と呼ばれる一幅があり、そこには死体が刻々と腐り果てていく様子が克明に描写されています。
この図は明らかに、観る者の強い性的欲望を、そのテンションの高さそのままに、世に無常を感じ来世の往生を求める篤い信仰心への質的転換を促すことに狙いと本質があったのではないでしょうか。
あなたもまた、エロス(愛の欲動)と表裏一体となったタナトス(死の欲動)に少なからず衝き動かされていくことになるはず。
今週のしし座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
「社会」の外にある「世界」へ
今週のしし座は、社会をすっ飛ばしたところで縦横無尽に行動していこうとするような星回り。
『下萌えぬ人間それに従ひぬ』(星野立子)という句のごとし。本格的な春が近づいてくると、冬の枯草の下から新たな草の芽が出はじめる。すると、それに応じるかのように人間もまた活動をはじめるのだという。
「それ」も草であると同時に、単なる人間の世界を彩る対象物としての「自然(ネイチャー)」という枠を超え、それ自体でひとつの独自世界を形成して律動している「宇宙(コスモス)」という語のスケール感をおのずと帯びてくるのではないでしょうか。
あなたもまた、謙虚さは忘れずに、しかし宇宙大のスケール感をもって、誰か何かと結びついていきたいところです。
今週のおとめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
意想外の誕生
今週のおとめ座は、知らず知らずのうちに理不尽さの権化のようになっていってしまうような星回り。
小島信夫の小説「馬」は、主人公の「僕」がある夜、家に帰ってくると庭に材木が積まれていて、奥さんの「トキ子」に聞いてみると、「僕」が知らない、なぜ建てるのかも分からない新しい家が、とにかく建つのだと把握するところから始まります。
ところが、はじめ小さな小屋か何かが建つのだと思っていたそれが、大きな二階建てであることに「僕」が気付き、慌てて「トキ子」のもとに駆けつけると、そこでさらに異常な事態に直面するのです。
あなたもまた、行動しているうちに予期せぬ流れに乗って、勝手にどんどん違う方向に逸れていってしまうような星回り。
今週のてんびん座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
こじれとねじれ
今週のおとめ座は、誰かにとっての死角と死角とをひそかに橋渡ししていくような星回り。
『釘を打つ日陰の音の雛祭』(北野平八)という句のごとし。「雛祭」と「釘の音」の対比の絶妙さこそが掲句の命です。
それは明と暗のようにシンメトリーをなす対照的な出来事を並べているというより、おたがいの死角に位置して直接的にはまなざし合えないような二物を、ふとした偶然から同時にまなざしてしまったことで、なんだかこれまで見えていなかった像が浮かびあがっていってしまうような絶妙さなのだと言えます。
あなたもまた、これまでの自分ならば考えもしなかったような現実が浮かびあがってくるような地点に、みずから足を運んでいくべし。