愛する人との別れ、大事にしていた人や物を失った時...私たちの心を癒し、悲しみに向き合う力を与えるヨガシークエンスをご紹介する。
ヨガジャーナル日本版編集部
悲しみの後に再び心を開くヨガ
15年前に夫を亡くした時、ヨガの練習は悲しみと向き合うための術となった……呼吸をし、動いて、アーサナに入るのを繰り返すうちに、悲しみに浸るよりも、対峙して前に進めるようになった。心はもろくなっても扉は閉ざさなかった。はじめは開いているのが苦しかったけれど、今はむしろ幸せだ。夫を失ってから何カ月もの間は、ひとりでもクラスにいても、ヨガを練習するたびに涙があふれてきた。その涙は私の人生の流れを止めずに絶えず前進させ、やがては痛みと喪失から心を大きく開いて世界を迎え入れられるまでに導いてくれた。誰の人生にも、文字どおり前に進めなくなるほどの悲しみが必ず訪れる。その時私たちは感情に向き合おうとせずに、目をそらしがちだ。定期的にヨガを練習し始めると、処理できずにいる感情から生じる滞ったエネルギーを手放せるようになる。今回紹介するシークエンスは、股関節を開くように組み立てられている。蓄積された感情を掘り起こして解放したいときには特に効果がある場所だからだ。このシークエンスで、痛みや悲しみを、恐れのない思いやりに転換しやすくなるだろう。
1.ヴァジュラーサナのバリエーション(稲妻のポーズ)
膝立ちになり、両膝と両足を揃える。かかとの内側同士がつくように手で押さえながら、ゆっくりとかかとの上に腰を下ろす。息を吸いながら両腕を耳の横に沿って上に伸ばす。吐く息で右手の指先を床(右足の外側)につけ、上体を右に倒す。吸う息で背すじを真っすぐに戻し、吐きながら上体を左に倒す。両サイドで3~5回繰り返したら、手を膝において上に向け、利き手の上にもう一方の手を重ねて5回深い呼吸をする。
ヴァジュラーサナのバリエーション/Photo by Chris Fanning
2.ダンダーサナ(杖のポーズ)
両脚を前に伸ばして座り、足首の内側同士をつける。両足首を90度に曲げて、腿を内側に強く寄せる。坐骨で床を押しながら、胸から頭上までを引き上げる。肩を背中側に引いて体側を伸ばし、上腕骨頭を胸の後ろに寄せるようにする。このまま深い呼吸を5回行う。
ダンダーサナ(杖のポーズ)/Photo by Chris Fanning
3.パスチモッターナーサナからプールヴォーッタナーサナ(座位の前屈から東側を強く伸ばすポーズ)
息を吸いながら両腕を耳の横に沿って上に伸ばす。吐く息で脚の付け根から上体を前に倒す。息を吸って両腕を耳の横に沿わせながら上体を起こし、息を吐いて両手をお尻の20~25cmほど後ろの床につける。指先は前に向ける。つま先を前方に伸ばし、肩甲骨を背中に引き入れて、息を吸いながらお尻、両脚、胸を引き上げる。このとき、尾骨はマットに向かって長く伸ばし、あごを胸から少し上げて、喉が楽に開くようにする。このフローを3~5回繰り返す。
パスチモッターナーサナ/Photo by Chris Fanning
プールヴォーッタナーサナ/Photo by Chris Fanning
4.アドームカシュヴァーナーサナのバリエーション(ダウンドッグ)
アドームカシュヴァーナーサナのバリエーション(ダウンドッグ)/Photo by Chris Fanning
5.カマトカラーサナ(ワイルド・シング)
右脚を上げている状態から、右足をマットの左側の床につけるように腰を開き始める。左手に体重がかかりすぎないように体を引き上げながら、左足の外側を軸に体を反転させる。右足が軽く床についたら、左の体側を伸ばす。右の体側から右腕までを長く伸ばし、胸を空に向けて大きく開く。このまま3回呼吸。ダウンドッグに戻り、4と5のポーズを逆サイドでも繰り返す。
カマトカラーサナ(ワイルド・シング)/Photo by Chris Fanning
6.アンジャネーヤーサナのバリエーション(ローランジ)
アンジャネーヤーサナのバリエーション(ローランジ)/Photo by Chris Fanning