米どころである福井県は酒造りも盛んで、35を超える酒蔵が個性豊かな日本酒を醸しています。そのなかでも世界的な人気を誇る黒龍酒造が、永平寺町に複合施設「ESHIKOTO(エシコト)」を2022年6月にオープンしました。福井の風土や文化を感じながら日本酒を楽しむ、ちょっと大人の旅に出かけてみませんか。
「ESHIKOTO」って?
「ESHIKOTO(エシコト)」は、黒龍酒造を擁する「石田屋二左衛門」のオリジナルブランドの名称で、同社が立ち上げた福井の食や文化を発信する場所の名前でもあります。「えしこと」とは日本の古語で「良いこと」という意味。人が集い、福井の良さを楽しむ拠点にしたいという思いで名づけられました。
食事やショッピングが楽しめる酒樂棟
約3万坪の敷地に2つの棟があり、今後も宿泊施設などが建設される予定
敷地には「酒樂棟」と「臥龍棟」があり、酒樂棟には黒龍酒造の日本酒のテイスティングや買い物ができる「石田屋ESHIKOTO店」や、パティスリーを併設したフレンチレストラン「アペロ&パティスリー acoya(アコヤ)」が入っています。イギリスの建築家サイモン・コンドル氏が設計した臥龍棟は一般非公開ですが、今後はイベント時に開放される予定だそう。今回は食事やショッピングが楽しめる酒樂棟を紹介します。(※施設は20歳以上の利用となり、ペットを連れての入場も不可。)
四季折々の風景を一望する絶景テラス
雪が降ると一面の銀世界になり、水墨画のような神秘的な風景に。春は桜並木、夏は新緑、秋は紅葉と、四季折々の風景が眺められます
前面にはベンチを備えた広いデッキがあり、眺望を楽しむだけでなく、パティスリーでテイクアウトしたスイーツでひと休みするのにもぴったり
酒樂棟の通路を抜けると視界が一気に開け、永平寺町の自然豊かな風景が視界いっぱいに広がります。目の前を流れる九頭竜川は、黒龍酒造の酒造りに用いる清らかな仕込み水の水源。空から降り注ぐ雨や雪が川に流れ込み、その伏流水が酒となって私たちのもとに巡ってきます。美しい風景を眺めながら、酒造りに欠かせない水の物語に思いを馳せてみるのもいいですね。
ココでしか手に入らない限定酒「永(とこしえ)」
店頭には「永」のシリーズとスパークリングの「ESHIKOTO AWA」、福井県産黄金梅で仕込んだ「ESHIKOTO 梅酒13」など、黒龍ブランドの一部をラインアップ
ランダムにカットされたラベルは、施設から見える永平寺の山並みの稜線をかたどったもの
黒龍酒造は文化元年(1804)創業の、福井を代表する酒蔵のひとつです。日本酒愛好家にもファンの多い「黒龍」や「九頭竜」が有名ですが、一番のお目当ては「石田屋ESHIKOTO店」でしか購入できない「永(とこしえ)」シリーズ。福井県産の酒米にこだわり、昔ながらの生酛(きもと)造りを活かした独自の手法で醸造されていて、これまでの黒龍酒造の日本酒とは違う魅力を持つ、まろやかですっきりとした味わいが特徴です。
テイスティングセットでお気に入りの銘柄探しを
ソムリエ資格を持つスタッフと対話しながら、好みの銘柄を探してみて
店舗奥のカウンターでは「本日のテイスティング」3種類1500円を提供。人気の銘柄や季節限定酒など、個性豊かな日本酒の利き酒が楽しめます。ボトルで購入する前に味わいを確かめたいときや、手軽に「ESHIKOTO」限定酒を味わいたいときに、ぜひ利用してみてくださいね。
ルミアージュをしているボトル。二次発酵後は臥龍棟のセラーなどで熟成させ、3年の歳月をかけて完成へ
カウンターの後ろはガラス張りになっていて、スパークリング日本酒「ESHIKOTO AWA」の醸造風景が見学できます。こちらは自然発酵で醸造していて、約15ヶ月間かけて行う二次発酵の工程で滓(おり)を下げる「ルミアージュ」という作業をしています。タイミングが合えば、朝と夕方に1回ずつ、瓶を回転させて滓を集める風景が見られるそう。
福井の美しい伝統工芸品に彩られた店内
笏谷石をヘリンボーン状に敷き詰めた床
酒器は福井の若手作家の作品を中心にセレクト
「石田屋ESHIKOTO店」は空間そのものも魅力のひとつ。床やカウンターには青みのある色合いが美しい福井県特産の笏谷(しゃくだに)石、壁紙には越前和紙、黒龍酒造の歴史と同じ樹齢200年の美山杉を用いたベンチなど、福井ならではの素材でしつらえられています。店内にレイアウトされた木製のチェストは伝統工芸品の越前箪笥で、なかには越前焼をはじめとした酒器が展示販売されています。いたるところに飾られている、女優で陶芸家の結城美栄子氏のオブジェもみどころです。