美しいものを求めていく
群言堂は「衣・食・住・美」を通して「根のある暮らし」を楽しむライフスタイルを提案しています。「衣食住」に「美」がついているんです。
私は、美しいかどうかをとても大事な物差しにしています。正しいか正しくないかだと議論になるけれど、美しいものというのは誰にでもスッと入っていける力があり、理屈を言わなくても一瞬にして直感で人間が感じることができるものだから。
築270年を超える古民家を移築し、群言堂のシンボルとして使い続けている
Akiko Kobayashi / OTEMOTO
高校時代、美術部で油絵を描いていたときに恩師からこう言われました。
「絵はがきのような綺麗な絵を描くな。たとえ線がゆがんでも絵の具がにじんでも、魂を揺さぶるような美しい絵を描け」
それから「綺麗」と「美しい」は違う概念だととらえています。
いま日本人は、「綺麗」なものでは飽き足らなくなるほどに多くのものを手に入れています。一方で、本当に「美しい」ものを手に入れることはできているでしょうか。商品やサービスの見た目だけでなく、つくり手の考え方やつくるプロセスまで、すべてを汲んで美しいといえるものです。
茅葺き屋根の事務所に向かうには、入り口から田んぼのあぜ道を通っていく
Akiko Kobayashi / OTEMOTO
「生き方」が産業になる
ある大学の先生が20年ほど前、私たちのことを「石見銀山の生き方産業」と名付けてくださったんです。雑貨業でもなくアパレルでもなく、私たち夫婦の生き方がひとつの産業を成しているからということでした。
石見銀山遺跡とその文化的景観は、2007年に世界文化遺産に登録されました。
その先生から「せっかく世界遺産になったんだから、世界標準になるようなライフスタイルを大森町でつくりあげてほしい。イタリアの小さな町から、アンチファストフードに端を発して『スローフード』という概念が世界中に広がったように」と背中を押されました。
Akiko Kobayashi / OTEMOTO
未来につながる「生き方」をここ石見銀山から発信し続けていけば、たとえ地球の裏側であっても共感してくれる人とつながって、大きく世界が変わるときがくるんじゃないかと考えています。