お金を貯める必要があるのはわかっているものの、物価高もあり、なかなか貯金ができていない人もいらっしゃると思います。『共働きなのに、お金が全然、貯まりません!』(三笠書房)の著者でファイナンシャルプランナーの柏木理佳さんに、共働き家庭でお金を貯めるコツについて伺いました。
共働きでお金を貯めるコツ
——共働きでお金がたまらない夫婦の共通点はどんなことがありますか?
一つはどちらも気を遣っていて、お金の話をお互いにしない夫婦、もう一つが夫婦どちらもお金にルーズなケースです。
支出や預金残高の話をせずに、把握しないままお互いに「相手が貯金してくれてるのだろう」というすごく甘い考えを持っている人たちは意外といて、あるとき確認したところ、全然貯金がなかった……みたいなことはよくあります。そういったことを防ぐためにも、家族で共同で管理する貯金口座を作ることを勧めています。
結婚相談所であるパートナーエージェントが2022年に既婚男女にアンケートを行ったところ、夫がお金を管理しているケースの幸福度は73.99%、妻がお金を管理しているケースの幸福度は71.9%、夫婦とも家計の管理をしていないケースでは10.9%であり、幸せな結婚生活を送るためにも、家計管理は重要です。
——お金について会話をしないし、話さないから現実を確認してもいないということですね。本書でも、家族口座について言及がありましたが、共有で管理するとはどのようなイメージでしょうか。
家族口座は夫婦で貯金を入れておいて、そこから引き出す金額を決めます。たとえば、食費は妻の口座から、家賃は夫の口座から引き落とすなど、なるべく負担を半分ぐらいにし、2万円ずつ自動的に家族口座に入れておくことにするとか。
もしくは、片方の口座は引き落とし専用、もう片方の口座を貯金用にしているケースで、貯金用口座は見える化しておく。お互いに確認できないと、片方がバレないように使うことができてしまいますから。二人分の給料の振込も同じ口座にして、そこから引き落としも行い、残高を確認しているパターンもあります。
海外では家族口座は当たり前のものになっていて、家族口座だけしか持ってないという家庭も、国によっては5~6割あるくらいです。日本ですと、家族の家計簿アプリで一括で管理する方法もあります。
家族カード・家族口座のメリット
——本書によると、海外では結婚を機に、大半の夫婦が普通口座やクレジットカードを共同で使うことのできる家族カードを作成するとのことですが、 夫婦間で秘密にしたい支出はないのでしょうか?日本だと、お互いの個人的な支出に「これは無駄だ」とケンカをした話を聞くこともあるので……。
日本ではお小遣い制度をとっている家庭が、4~5割くらいです。家計全体から妻が夫に数万円渡しているという家庭が多いのですが、海外ではお小遣い制度という文化は一切ないので、日本の話をすると「そんなの聞いたことがない」と驚かれます。
同じ口座に二人の給料が振り込まれて、そこから「お互いの支出一括で考える」という方法が主流です。双方の個人的な支出は、金額ベースで考えれば不公平感はなくなります。たとえばお互い月に1万円を自由に使うとか。自由に使える金額も明確なので、金額をルールにした方がケンカにもなりません。
何に価値を置いてお金を使いたいかは、人それぞれの価値観の問題だから自由です。だからこそ、金額をルールにすると、相手の行動に口出しせずにケンカにもなりません。
なお、米国の多くの研究では、家族カードが幸福に良い影響を与えることがわかっています。
——冒頭にもお話があったように、日本では夫婦でお金の話をすることに抵抗のある人も少なくないため、共通の口座にして可視化させることのハードルが高いと思いますが、乗り越え方はありますか?
少ししか貯金がないのであれば「1年後に○○に旅行しよう」など目標を2人で決めて、そのために貯金口座を作るなど、小さなステップから始めていくといいかもしれません。
もう少し貯められそうでしたら、家を買うとか、子どもを作るとか、お金のかかることについて話し合ったうえで、いくら貯金が必要なのかを確認し、可視化させるために家族口座を作り、毎月いくらずつか入れていくのもいいでしょう。
クレジットカードを共同のものにすると、明細で互いの支出が確認できるため「見られている」という意識が働くので、なるべく使わなくもなります。
——お金を貯めていくためには家族口座にすることのメリットもわかったのですが、デメリットもあるのでしょうか。
見えてしまう分、内緒にはできないので、話し合いは必要です。でないと「これは本当に必要なの?」と衝突してしまいますから。お互いに遠慮せずお金の話を自然にできるようにしておくといいですね。これからパートナー探しをする方は、結婚以前に、マッチングの時点でお金の話をしておくと、ミスマッチを防ぐこともできます。
年収や将来受け取ることのできる年金額など、お金の詳細を話しておいた方が関係が長続きするという説もあるので、お金の話をすることはタブーではありません。共同でやり取りをしても、お金の話し合いをしないと、お互いのことが理解できないので、喧嘩になってしまいます。幸福度を上げるためにも、ちゃんとお金の話をしていきましょう。
お金の話し合いができないと……。
——お金の話し合いがしたくても、パートナーが向き合ってくれなくて悩んでいる人は少なくないように感じます。
日本では子どもの教育費(私立へ進学する選択肢)、物価が上がって食費が○万円上がってるけれどもどうするか、親戚の冠婚葬祭でいくら必要だけど……といったお金の相談を持ちかけるのはいつも妻で、それに対して曖昧な返事をする夫という話を聞くことが多いです。
前提として、妻は家族の問題だから話し合いをしたいのですよね。それでもまだ「任せるよ」とはっきり言ってくれればまだいいのかもしれませんが、今は収入自体が少ないので「任せるよ」とも言えない。結局曖昧な返事になってしまうと、いつ返ってくるかわからない夫のレスポンスを、妻はいつまでも待っている必要があるんです。ゴールが見えないことを待ってるのは、すごくストレスが溜まることです。
もちろん、ただ待っているだけでなく「あの話ってどう?」とリマインドしても、再び保留にされたり、何度も聞いても、まだ曖昧な反応しか返ってこないため、結局妻が一人で結論を出すしかなくなってしまうことが珍しくないです。お話を伺っていると、こうやってお金の話し合いができないことが離婚の原因になっていることもあります。
※後編に続きます。
『共働きなのに、お金が全然、貯まりません!』(三笠書房)