食事をするとき、その器が素敵だとおいしさも倍増するような…とってもしあわせな気持ちになりませんか。目でみてたのしめる、味わってたのしめる、そんな豊かな「いただきます」の時間を堪能できるお店をご紹介します。第8回目は、東京都東久留米市にある「うつわ&カフェ かくしち」にお邪魔してきました。
想いを継いだ店
東久留米駅から徒歩15分。美しいグリーンが目を惹く和モダンな建物が今回の目的地。「うつわ&カフェ かくしち」です。
店内に足を踏み入れるとすぐにお目見えするショーケースには、手づくりの焼き菓子、洋菓子がずらり。
アクセサリーやインテリア、器など手仕事の作品も並び、その場で購入することも可能なギャラリー併設カフェとなっています。
店内には香ばしい珈琲の香りが漂っていました。カウンターでじっくりと抽出してくださっているのが店主の小林さんです。
「『かくしち』という名前は、母方の実家の屋号からきています。長野県の諏訪湖のほとりで塩問屋『かくしち』をはじめたのが600年前。その屋号を店名にして、母と母の友人とで立ち上げたお店がここ『かくしち』です。美術展や個展を巡ることが趣味だった母には『美味しいひとときとともに、素敵な器とそれを生み出す作家さんを応援したい』という想いがあり、ギャラリーカフェとしてオープンしました」。
その後、小林さん夫妻がお店を完全に継ぐタイミングで、かくしちはフルリニューアル。店名と場所、コンセプトはそのままに新しくスタートし、今年で7年目に突入しました。
「母が営んでいた頃の、多くの人に愛されてきたかくしちの雰囲気も残したくて。“前のお店の延長線上にある落ち着ける店”にするために、カウンターや椅子、棚などは前のお店のものを引き継いで使用しています」。
家具は飛騨産業のキツツキマークシリーズのもの。「年に一度、クリームやワックスを塗らなければならず手がかかるんですが、座り心地が抜群なんですよ。経年変化した色味もいいでしょう。何より、前のお客さまがお店を訪れたときに『変わってない、ああよかった』と言ってくださるのがうれしくて」。
一見普通だった店内の扉も「かくしちの落ち着いた雰囲気に合わせたい」と小林さんが手をかけてDIY。味わいたっぷりに変身した木扉は空間のアクセントになっていました。ちなみに、両面を削るだけで10時間かかったそうです。
文化の香り
かくしちで使用される器はすべて作家さんの手でつくられたもののみ。お母さまのお店だった頃からのスタイルです。
趣味が高じて、目利きとしてさまざまな器を集められたお母さま。小林さんもまた、学生時代には陶芸と吹きガラスを学んでこられたという、目利きの持ち主です。「僕も、ものづくりを生業にしている作家さんを応援したいという気持ちは母と同じなんです」。
カウンターの棚には、そんなふたりが選んできた茶器たちがずらり。「益子焼、笠間焼をはじめ、陶器市やクラフトフェアイベントなどで出会い、魅力を感じた作家さんの器たちを使っています。母が当時見つけてきて、今では大活躍されている作家さんの器も多数置かせていただいていますよ」。
取材の合間に「ちょうど珈琲が入ったのでどうぞ」と差し出された一杯。カップは陶芸家 川尻琢也さんの作品です。「川尻さんの器に出会ったのは、彼がまだ作家として駆け出しの頃。今ではMUJI HOTEL GINZAのレストラン食器にも採用される注目の作家さんです」。