「事件や事故を目の前にすると、気持ちが落ち込んでしまう」「知人のつらい話を聞いて、一緒に苦しくなってしまう」など...思い当たる人、それって【共感疲労】かもしれません。そう感じた時に知っておきたいセルフケアについて、臨床心理士が解説します。
共感疲労とは?
【共感疲労】という言葉を聞いたことがありますか?心理学者のチャールズ・フィグレーが提唱した理論で、他者の悲しみや苦しみに接した時、感情移入しすぎてしまい、無気力状態や心身の疲弊、エネルギー低下を招く状態のことです。人には個人差や程度の違いはあれ、相手の気持ちになる共感能力が備わっていますが、それが度を超えると精神的な疲れ、ひどくなるとバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こすことも。
共感疲労になりやすい人の特徴は?
例えば、ガンなどの末期患者と接する医療従事者や外傷後ストレス障害(PTSD)患者の家族など、直接的に苦しみを目の当たりにして支援を行っているような人には起きやすいと言われますし、その他にも、自然災害や事件・事故などをメディアの報道で見ただけで悲しくなり落ち込んでしまう、というように間接的に起きる場合もあります。下記のチェックに当てはまる方は、感情疲労を引き起こしやすいかもしれないので注意が必要です。
□仕事や自分の役割に対し、高い使命感がある
□理想と現実にギャップがある
□公私の境界が保ちにくい
□自己肯定感が減少していること
□過去にトラウマ的な事柄を経験したことがある
□感受性が強い
□何事にも敏感になりやすい
もし「病気ではないのに、体調不良がつづいている」「とにかくいつも疲れている」「仕事でもプライベートでも起こりやすくイライラする機会が増えた」「朝起きて仕事や学校に行くのがつらい」などの症状が2週間ほど続いている場合は、医療機関への受診も検討した方が良いかもしれません。
共感疲労を防ぐために
休息を取る
共感疲労になる時、心も身体も疲れていることが多いです。衣・食・住を整え、十分な睡眠を取り、休息することを心がけましょう。
自分の好きなことをする
趣味、自分が楽しいと思うことをして、誰のためでもない、自分のための時間を作りましょう。
誰かに話してみる
自分の感じている想いを誰かと共有するだけで、気持ちが和らいだり、落ち着いたりすることがあります。また他者に話すことで、自分の感情や共感疲労を引き起こしている状況と少し距離が生まれ、客観的に整理することができるかもしれません
『相手は相手、自分は自分』を頭の片隅に
気持ちの上で、他者と自分との間に境界線を引くことも大切。『これは相手に起きていること』『ここから先は自分の問題ではない』と区切りをつけることを意識してみて。境界線を引くことは決して冷たい・悪いことでなく、自分と相手を守るために大切なことなのです。
精神的に疲れ、共感する能力を失ったと感じるとき、罪悪感を覚えることがあるかもしれません。しかしこれは共感疲労によるもので、うまくコントロールする方法を知れば、共感疲労から自分の身を守ることができます。『その方法がわからない』という方は専門家と一緒に方法を見つけていくのも効果的です。一人で抱え込まず、誰かに頼ってみてくださいね。
ライター/南 舞
臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングと近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。
Instagram: @maiminami831