メールや手紙の書き出しに入る「時候の挨拶」。うまく使いこなせると大人として素敵ですが、なかなか難しいですよね。そこで、国語講師で『美しい女性をつくる言葉のお作法』(かんき出版)著者の吉田裕子さんに時候の挨拶の使い方と例文を教えてもらいました。ぜひ参考にしてください。
書面で連絡する際には欠かせない「時候の挨拶」。
難しいもの、面倒なものだと苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか。
書き方やよくある例文を知っておくことで、手紙や改まったメールを送る場面で、きちんとした印象を与えることができます。
時候の挨拶とは。どんなときに使うもの?
時候の挨拶とは、それぞれの季節や月の気候・行事を踏まえた挨拶で、手紙やメールの初めの部分に書きます。
対面で会話をするときも、「こんにちは、今日は暑いですね」のように会話を始めることがありますよね。
季節という共通の話題から始めることで、コミュニケーションの場を開くような機能があるのです。
時候の挨拶には、「陽春の候」「炎暑の候」のように、「熟語など一語」+「の候」という形もあれば、「毎日うっとうしい天気が続きます」のように、文として書く形もあります。
現在のビジネスシーンでは、書面や手紙での連絡、改まったメール連絡の冒頭部分において使われています。
以下は、実際に使われる具体的な例です。
(1)手紙で連絡するとき
お礼状を送ったり、重要な依頼をしたりする際、今でもあえて手書きの手紙の形で連絡することがあります。そのときは、時候の挨拶をはじめ、手紙の書式に従う必要があります。
(2)組織として書面で連絡するとき
組織としての通知・お礼・お詫びなどを、書面で作成することがあります。ここには時候の挨拶が入るのが一般的です。
(3)一斉メールを出すとき
着任の挨拶、退職の挨拶など、関係者に一斉に送付するメールがあります。目上の人を含め、さまざまな相手が含まれるメールですので、改まった書式で書くことが求められます。
(4)かしこまったメールを出すとき
仕事をお願いしたいと思い、専門家に初めて連絡を取るときなど、特に気を使うシチュエーションでは、時候の挨拶も含めた丁重な書式でメールする方が良いでしょう。
時候の挨拶を使わない場合
時候の挨拶は必ず付けなくてはならないものではありません。むしろ、付けることで相手に違和感を抱かせてしまう場合もあります。時候の挨拶を使わないのは次のような状況です。
(1)社内の人とメールをやり取りするとき
時候の挨拶は改まったシチュエーションで求められるもので、社内のやり取りには適しません。
社内のメールでは、簡潔に用件を伝えることが要求されますので、「お疲れ様です、○○です」とシンプルな挨拶で始めれば十分です。
なお、社内の人が相手でも、わざわざ手紙を書いてお礼を伝える場合などには、時候の挨拶を付けるのが一般的です。
(2)何回もやり取りが続いているとき
顧客や取引先が相手でも、メールが何往復も続く場合には、時候の挨拶を省略します。毎回時候の挨拶を付けていては、むしろうっとうしく感じられます。
問い合わせ対応などで、何度もやり取りが続きそうな状況では、
(1)最初にこちらから連絡するときの冒頭部分
(2)最後に一区切りをつける際の締めくくり部分
に時候の挨拶が入っていれば十分です。