ときに冬の日の朝焼けのように、ときに夜空にまたたく星たちのように…。手にする人たちの想像を掻き立てるような、水彩風のやさしいにじみを活かしたアクセサリーを制作されているつばめ屋さん。作品に対する想いや、アイデアが生まれる瞬間など、たっぷりお話をうかがいました。
作家の道を選んだ理由
色とりどりの絵の具がまるで花束のようにギュッと収納されたかごと、パレット代わりに使っているクッキングシートが広げられた小さな作業台。「私の作品はすべてここから生まれています」というお部屋の一角に構えられた小ぢんまりとたスペースを囲んで、取材ははじまりました。
作家になったきっかけを教えてください。
つばめ屋: 専門学校でグラフィックデザインの勉強をしていたんですが、就職活動が思うようにいかなくて頭を抱えていました。もともと趣味で編み物や手芸、絵を描いたりしていたので「仕事をしながら、ものづくりも続けられたらいいな」と思っていたんですが、就職活動に苦戦する中で「ものづくり」に対する気持ちがどんどん膨れ上がってきたんです。そこで思い切って就職活動をやめて、作家の道に進むことにしました。
それは思い切った決断をしましたね。
つばめ屋: まだ本格的に作家活動をしていたわけでもなかったですし、学校の先生にも大反対されました。けれど、すでにそのときには自分の中で気持ちが固まっていたんです。
「stone earrings」に使用するモチーフ。光を受けて、まるで宝石のようにキラキラと輝きます。「表面をぷっくりさせることで、より光を取り込みやすいシルエットに仕上げています」とつばめ屋さん。
アクセサリー制作をはじめたのはどうしてですか?
つばめ屋: 趣味で描いた絵を眺めていたときに、「平面でたのしむだけではなく、立体的なアクセサリーとして身につけることができたらおもしろいんじゃないか」と考えたのがはじまりです。
つばめ屋さんが最初につくったブローチシリーズ。
そうして、初期の作品であるブローチシリーズが誕生したんですね。
つばめ屋: そうなんです。当時、人物の絵をよく描いていたので、それをそのままプラバンでブローチにしたんです。最初は顔までしっかり描いていたんですが、表情によってブローチの印象が決まってしまうのは、なんだかもったいないな…と。身につける人に想像しながらたのしんでもらいたいので、顔の部分を抽象的に表現するようになりました。
例えばこの「追風ブローチ」では、どんなことを表現されているんですか?
つばめ屋: 制服を身につけた男女のペアなんですが、青春時代の少し甘酸っぱい“帰り道”を表現しました。顔の部分は、駅のホームや通り過ぎる電車の窓、ホームから見える淡い夕焼けのグラデーションをイメージして描いています。
代表作となっている「stone earrings」はどのように生まれたのでしょうか?
つばめ屋: プラバン作品を制作するのにクッキングシートを使うのですが、ある日それをパレット代わりに使ってみたら、すごく便利で(笑)その上に何色も絵の具を出しながら作品を制作していると、偶然から生まれたすごく美しい“にじみ”が完成していて、それをアクセサリーで表現したいと思ったんです。
偶然から生まれたものだったんですね。普段の色の組み合わせはどのようにして考えているのでしょうか?
つばめ屋: 映画や音楽、日々目にする風景など…今まで見たものや聴いたものを自然と頭の中で蓄積していて、それが色として表れているのだと思います。それと、出身地の熊本県の阿蘇は、とても自然が豊かな地域なので、知らず知らずのうちに空の“青”や木々の“緑”などがインプットされていたのかもしれません。
すべて1点もの…ということですよね?
つばめ屋: 「stone earrings」に関してはそうですね。ひとつひとつ手で色を塗っていくので、私も予想しなかったものが生まれたりすることもあります。左右の組み合わせも直感で決めていくので、たのしみながら選んでいただきたいですね。