肩こりは、筋肉を伸ばすだけでは治らない
「凝っている筋肉はストレッチして伸ばせばいい」と思いがちですが、それでは肩こりは治りません。また、マッサージして揉むことも良いですが、深層筋まで届きにくく一時的な効果でまたすぐに元に戻りやすいです。そもそもそこの筋肉が伸びた状態で固まっているのか、逆に縮んだ状態で固まっているのかを、まず理解しましょう。
例えばパソコンやスマートフォンを見る時は、顔が前に頷くように傾き、肩と腕が体の前の方にきます。すると、首の後ろから肩にかけて走っている僧帽筋上部と肩甲挙筋は伸ばされた状態になります。また、左右の肩甲骨の間にある菱形筋も伸ばされた状態になりがちです。もうすでに伸ばされ続けているこれらの筋肉を、ストレッチでさらに伸ばしてもあまり意味がないことがイメージできるでしょうか?
逆に、身体の前側の筋肉である大胸筋・小胸筋・胸鎖乳突筋は、縮んだ状態で固まっています。どちらの筋肉もその状態が続くと血行が悪くなり、凝りにつながります。その凝りをどうすれば解消できるかというと…
・大胸筋・小胸筋・胸鎖乳突筋:縮んで固まっている筋肉は、一般的なストレッチで伸ばせばOK
・僧帽筋上部・肩甲挙筋・菱形筋:伸びて固まっている筋肉は、一般的なストレッチだけではNG
次に詳しく説明していきます。
2種類のストレッチを理解しよう
実はストレッチには、静的ストレッチ(スタティックストレッチ)と、動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)の2種類があります。
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
ストレッチと聞いて多くの人が思い浮かべるのがこちらで、ゆっくりと一定方向に筋肉を伸ばし、その状態で数十秒間しばらく静止します。クールダウンやリラックス効果を狙うエクササイズとして行われます。(例:太極拳、ヨガなど)
ヨガは一般的にこちらにカテゴリされますが、ポーズやポーズの静止の長さにもよります。ヴィンヤサやフロースタイルのヨガだと、動的ストレッチに含めて良いかもしれません。
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
ある方向に関節を動かしながら筋肉を縮めたり伸ばしたりすることを繰り返します。筋肉をほぐして温める効果があります。(例:エアロビクス、ピラティス、ラジオ体操など)
前述した通り、伸ばされて固まっている筋肉を静的ストレッチでさらに伸ばしても意味がないのです。筋肉を動かさないことで固まっているのだから、動的ストレッチで積極的に動かし、血液の循環を高めることが最善の対策になるということです。
常に「良い姿勢」をキープするのは間違い
デスクワークなどで猫背姿勢になったり、ソファーのような椅子にもたれ掛かるように座った姿勢が悪い姿勢だということは、もう誰もがお分りだと思います。では逆に、良い姿勢をずっと続けていれば肩こりは生じないのでしょうか?答えはNOです。問題は悪い姿勢をとることだけでなく、「姿勢を変えないこと」だからです。
私は2006年にニューヨークで全米ヨガアライアンスを取得しました。その第1回目の講義での冒頭のメッセージが、「Change shape」でした。「Change shape is energy.」常に形を変えていくこと、それがヨガの始まりであり、全てのエネルギーだと教えられました。あれだけ多くのヨガのポーズの起源は、何時間も何日も神様に祈るために、坐位や立位など次々と安定した姿勢を求めていったところにあると言われています。
そこからも分かる通り、常に良い姿勢をキープすることが良いことではなく、こまめに姿勢を変えることが重要になります。長時間同じ姿勢の作業をする際は、時々立ち上がったりストレッチをしたり、伸びをしたり歩いたり、姿勢を変えるといった「リセット」をする時間を設けることが大切です。そうすることで、筋肉内の循環が改善されて、疲労物質や発痛物質が滞りにくくなります。
肩こりを解消するエクササイズ
では実際に肩こりのエクササイズを紹介していきます。
①動的ストレッチ
まず動的ストレッチで積極的に筋肉の伸び縮みを繰り返すことで、筋肉を温めて循環を整えましょう。反復してその動作を繰り返すことがポイントです。
肩回し 30回×逆回し
肩甲骨にくっついているたくさんの筋肉をまとめて一気に動かしていきます。これで肩甲骨周囲の筋肉の循環が非常に良くなります。肩回しと言いましたが、回すのは肩甲骨です。左右の肩甲骨が寄ったり離れたり、肋骨の上を円を描くよう大きくスライドして動くのを感じましょう。肘の先で正円を描くようゆっくりと回してください。
Photo by Yuki Horikawa
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