9月某日、macaroni編集部のオフィスに3人の食のプロフェッショナルが集いました。3人が繰り広げるのは、日本のカレーの未来のお話。日本固有の“だし”を基軸に、日本のカレーに望む進化について大いに語ってもらいました。
macaroni編集部
日本三大ラーメンといえば、札幌・喜多方・博多。餃子は、宇都宮・浜松・八幡。
じゃあ、カレーは?
ラーメンも餃子もカレーも、海を渡ってやってきたグルメ。どれも日本の国民食なのに、カレーだけに地域性がないのは思えば不思議なこと。強いて言えば、インドカレーや欧風カレー、和風カレーに分類はできるけれど、ちょっと違う。
“日本のカレーは、各地で独自の進化ができるはず”。そんな旗印の下、カレーを愛して止まない3人のプロフェッショナルが集いました。スパイス貿易商のシャンカール・ノグチさん、MENSHO代表でラーメンクリエーターの庄野智治さん、そしてカレープロデューサーとしても活躍するフードブロガー・カレーマンさん。日本固有の“だし”の風味を前面に押し出した「だしカレー」の開発に携わったお三方です。
彼らが目をつけたのは、だしとスパイスの意外な好相性。「組み合わせ次第で無限の可能性がある」と一致するみなさんですが、日本のカレーの未来に対してどのような青写真を描いているのでしょうか。プライベートでも仲良しだというお三方による、マニアックな座談会がはじまります。
カレーは人柄が出るもの
ーーだしカレーのお話に入る前にそもそものお話なんですが、みなさんが思うおいしいカレーの条件ってなんですか?
(ノグチ)条件か……(笑)。いきなり難しい質問ですねぇ。
ーーすみません(笑)。
(ノグチ)それでいうと、つくった人の人柄がひとつですね。その人次第で味の良し悪しが変わってくるんですよ。ビーフカレーでも野菜カレーでも、つくり手が一緒だと不思議と同じような味になるんですよね。だから、僕はその人の持っている味わいが好きなんですよね。自分がやったとしても人柄が出ると思います。
(カレーマン)たしかにノグチさんのカレーを食べるとノグチさんらしい味がするんですよね。うまく口では表現できないけど。何種類か食べたことがあるんですけど、味の方向性が違っていても、ノグチさんらしいカレーってあるんですよね。
(ノグチ)そう、あるんですよね。
(カレーマン)味の方向性とは違う、世界観の違い。完成させようとしているイメージの違い。そういうのを感じるときはありますね。センスといえばセンスなんでしょうが。
(ノグチ)舌で感じて脳で受けて。だから少しずつ味見しながら精度を高めていく。今回のだしカレーもそうだし、味見をしながらふたりでつくったじゃないですか?
(庄野)そうですね。
(ノグチ)それで後からだしを合わせていくなかで、センスがぶつかり合うようにだしができあがったし、カレーができあがった。トータルでカレーマンが見てるし、そのぶつかり合いが今回の商品だと思います。誰がっていうわけじゃなくて、三人の人柄、チームの色が出たような感じでしたね。
ーー今回だしのプロとして開発に参加している庄野さんですが、ラーメンにも人柄が表れるものですか?
(庄野)ノグチさんのお話を聞いてて「マジか!ラーメンと一緒じゃん!」って思ってたんですけど(笑)。やっぱりその人っぽい味になっていくんですよね。それって、自分で無意識下の感覚値だったり、DNAだったりするんですよね。僕は作品としてラーメンを見てるんですけど、人柄が出るし、同じレシピをもとにつくっても人が違うだけで、仕上がりも変わってくるんです。
ーーそこまで“人”で変わるんですね。
(庄野)はい。今回、試作段階からカレーを食べていて、ニボシ感とかは、「これうちの味だな~」とは思いつつ、みなさんからすごいパンチをもらってるなっていう感覚でした(笑)。
(カレーマン)ははは(笑)。そうだったんだ。
(庄野)融合感がおもしろかったですねぇ。
(ノグチ)だけど、ニボシのパンチもちゃんと受けましたよ。
一同:(笑)。