ヨガジャーナル本誌で『漫画で読むヨガ哲学』を監修している谷戸康洋先生が、悩めるヨギに向けて送る“ヨガ哲学の処方箋”。連載形式で、ヨガ哲学の学びから考える、こころのメンテナンス法を学びます。今回は、「いつも不満ばかりで満たされない...」という悩みに向き合います。
谷戸 康洋
不満が多いのはなぜ
日頃から不満や、愚痴が多くないでしょうか? それは、もしかすると、物事のマイナス面を見ることが、癖になっているかもしれません。物事のマイナス面ばかり見る癖がついてしまうと、不満が多くなってしまいます。
例えば、晴れている日は、「乾燥して嫌だな」「暑くて大変」「日に焼けたくない」「たまには雨が降って欲しい」と思い、雨が降ると「洗濯物が乾かない」「濡れるから外に出れない」「気分が下がる」と言っているときは、マイナス面ばかりに目がいってしまっています。天気のことのように、変えられないことに不満を言っているときは、自分のことしか考えていないときかもしれません。
自然界では、晴れも、雨も、雪も、バランスを取るために全てが必要な動きです。自分のスケジュールや都合に自然は合わせてくれません。変えられないことは、受け入れ、楽しめるようになると不満も少なくなるでしょう。
晴れていたら、「晴れてて気持ちいいな」「晴れたから海に行こう」「暑いから日焼けしよう」「プールに行こう」「山に行こう」と思う人や、雨が降れば「花壇に水あげる手間が省けた」「新しく買った長靴履ける」「乾燥してたから良かった」と思う人は、自分を自然に合わせることができ、良い面を見ることができるので、不満も少なく楽しめます。
さらに例え話で、家では、お母さんがご飯を毎食作ってくれるとします。自分はご飯を作ることができません。作って貰っていても、「味が薄い」「おかずが足りない」「ご飯の炊き加減が固い」「カロリー高い」などと不満ばかり言っているときは、相手のことを考えていないことが多いでしょう。
ヨーガの言葉の中に「サントーシャ」という言葉があります。サントーシャは知足と訳され、足るを知るという意味があります。「足りていること、満たされていることを知りましょう」という教えです。自分は何もしていなくても、ご飯が出てきて、洗い物までしてもらえていたら、こんな幸せなことはありませんし、洗濯、掃除、買い出し、仕事をしながらもご飯を毎食作ってくれていたとしたら、感謝しかありません。さらに、経験していないのに、不満を言ってしまうことが問題かもしれません。
一度、ご飯の支度から洗い物までを、今の仕事をしながらでも、何日間か準備をしてみると、お母さんの大変さがわかり、不満よりも感謝の気持ちが出てくるのではないでしょうか? 自然や他人も自分の思い通りに動いてくれるわけではありません。生かされていること、支えられていることの、小さなことでも感謝の心で過ごしましょう。
今ある不満が、視点が変わって感謝・満足に変わったら、たくさんの幸せが身近にあったことに気付くでしょう。
教えてくれたのは…谷戸康洋先生
器械体操でインターハイ、国体に出場した経験を持つ。2006年、whitebirch yoga groupを設立し、2012年に自身のスタジオ「fika」を山梨県にオープン。全国のイベントやワークショップでも指導を行う。ヨガジャーナル日本版連載「漫画で読むヨガ哲学」を監修。