ヨガジャーナル本誌で『漫画で読むヨガ哲学』を監修している谷戸康洋先生が、悩めるヨギに向けて送る“ヨガ哲学の処方箋”。連載形式で、ヨガ哲学の学びから考える、こころのメンテナンス法を学びます。今回は、「他人とぶつかってしまうことが多い…」という悩みに向き合います。
谷戸 康洋
思ったことを伝えることは大事。だけど、相手に押し付けていない?
他人とぶつかってしまうことが多い…。喧嘩をしたいわけではないけれど、度々、他人とぶつかってしまい、後悔することありませんか? 思ったことを素直に、話せることは素晴らしいことだと思います。その場では、思っていることを言わずに、あるいは言えずにて、後で他人に本当の気持ちを話すことが習慣化すると、愚痴や不満が多い人になってしまいますし、相手には本音は伝わらないので、なかなか現状は変わりません。
しかし、思ったことを、考えなしに何でも伝えてしまうことも、相手を傷つけたり、不快を与えてしまうかもしれません。思ったことを、その場で素直に話せる力は、大事だと思いますが、自分の「正義感」や「正しさ」の価値観を押し付けてしまうと、ぶつかることが増えてしまいます。この正義感や正しさの押し付けは「モラルハラスメント」になり、本人は絶対正しいと思っていることがやっかいなのです(笑)。
衝突を避けるために必要なこととは
一つの物事を解決する答えは、一つではありません。たくさんの正しい考えが存在します。数学でも、一つの答えを出すための、式は一つではありません。無数に式を作り出すことができます。仕事や家事の段取りも人それぞれで、目的が達成できていれば、段取りは無数にあります。
チームで仕事をする場合などの、他人と協力しなければいけない場合は、たくさんの意見が出てきますが、毎回毎回、自分の意見を押し通そうとしすぎると「なんでも否定する人」に思われてしまいます。SNSでも、自分の正しさをアピールしたり、他人の投稿を否定していると、これまた、なんでも否定するめんどくさい人と思われてしまうでしょう。
人は、共感されることで一種の安心感を得ます。正しい答えは、自分だけでなく、たくさんあります。効率だけ求めれば、もしかしたら、自分の答えが優れているかもしれませんが、共感することなしに、いつも自分の意見を押し付けてしまえば、他人とぶつかることも多くなります。自分が他人の思い通りにならないように、他人も自分の思い通りにはなりません。思い通りにならない、自分の考えを理解してくれない、正しいのは自分だということの主張が強すぎると自分も相手も大きなストレスとなります。
自分以外の正しい意見もあるということを受け入れ、相手の考えも尊重し、認めましょう。相手の考えも尊重でき、認めながら、自分の意見も伝えられるようになることで、否定が減り、ぶつかることも少なくなるでしょう。
教えてくれたのは…谷戸康洋先生
器械体操でインターハイ、国体に出場した経験を持つ。2006年、whitebirch yoga groupを設立し、2012年に自身のスタジオ「fika」を山梨県にオープン。全国のイベントやワークショップでも指導を行う。ヨガジャーナル日本版連載「漫画で読むヨガ哲学」を監修。