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梨状筋をストレッチして腰痛を予防する3つのヨガポーズ

美容

梨状筋はあまり耳慣れない筋肉だが、動きの基盤となる骨盤や仙骨に安定感と軽やかさをもたらす、非常に大切な筋肉だ。そして、硬い梨状筋は腰痛や坐骨神経痛の原因にもなる。ここで紹介する3つのポーズで、健やかな梨状筋を手に入れよう。

DOUG KELLER

梨状筋とは何か:梨状筋の位置と働き

クラスでは生徒たちの多くが木のポーズでぐらぐらしている。しかし、その隅で一本の木だけが堂々と立っていた。その生徒の木のポーズも他の生徒たちのように多少は揺らぐものの、その体幹の安定性には単なる集中力以上の並外れたものがあった。彼女はポーズに安定と軽やかさをもたらすカギをつかんでいたのだ。そのカギとは、仙骨には安定を、チャレンジングなポーズでは軽やかさと広がりをもたらすのに大きな役割を果たす――聞き慣れない、過小評価されがちな――小さな筋肉、梨状筋だ。

木のポーズ
体幹

梨状筋は、主として外旋筋であり、股関節において脚を外旋する小さな深層筋の一つだ。坐骨神経痛の原因としても悪名高い。梨状筋が硬くなると坐骨神経を圧迫し、臀部から足に向かって走る神経のあらゆる箇所で焼け付くような痛みを引き起こす。また、鳩のポーズなどで股関節のストレッチをする際に鋭い痛みを感じたり、股関節や仙骨のあたりがこわばって前屈が容易でなくなったりする。梨状筋の動きが制限されれば、腰の痛みと緊張につながり、さらには日常の動作やウッターナーサナ(立位前屈)のような姿勢でも支障をきたすようになる。

立位前屈

これらの理由から、梨状筋は、本来の機能を果たすよりも痛みを引き起こすほうが多い単なるトラブルメーカーとみられがちだ。しかし、この筋肉は重要な目的を果たしている。最も基本的な役割は、骨盤の背面と背骨をつなぐ三角形の骨、仙骨を安定させることだ。そんな偉業をどう成し遂げているかを理解するには、梨状筋を視覚化するとわかりやすい。梨状筋は、寛骨臼の後ろの左右に位置し、それぞれの大腿骨上部の外側から仙骨へと走っている。

梨状筋が硬いと腰痛が起こる理由

梨状筋は、帯状の結合組織もしくは筋膜によって結合されており、尾骨の真上にある仙骨へとのびている。イメージとして理解するために、まず脚の骨を二本の木だと想像してほしい。梨状筋は、その二本の木の間にぶら下がる筋膜ハンモックに、左右から扇形に広がって絡み合うロープの束のようなものだ。仙骨はそのハンモックに揺られながら、二本の木が傾いたり動いたりするたびに位置を調整する。この筋膜ハンモックがあるから、梨状筋は仙腸関節の動きと安定性を調整できるのだ(下のイラストを参照)。

picture

illustrations by Stephanie McCann

とはいえ、この仙腸関節はひじょうに調整が難しい。仙腸関節は、歩いたり走ったりする際に、骨盤から脚を動かせるように緩んでいなくてはいけないが、それと同時に、仙骨の上に背骨をとどまらせるために安定もしていなくてはならない。梨状筋は仙骨を安定させながらも、必要に応じて自由にさせる必要があるのだ。
足を一歩踏み出すと、力の衝撃波が脚から腰に伝わり、仙腸関節はその衝撃に対して骨盤を引き締める。梨状筋は脚に体重がのっているときは、より強く仙腸関節を引き締めて、仙腸関節の靭帯をサポートする。だが、体重がかかとから離れるやいなや、今度は骨盤を緩めて脚を揺れ動かすようにしなければならない。それは見事に調和した抱擁と解放のダンスのようなものだ。うまく連携のとれた左右の梨状筋は、骨盤に安定感と軽さを与え、活き活きとした歩みをもたらす。
だが、その繊細なバランスが崩れて、梨状筋が硬くなりすぎたり緩みすぎたりすると、仙腸関節の痛みなどの問題が起きる。梨状筋が硬くなると、梨状筋ともう一つの外旋筋の双子筋にはさまれた大きくて長い神経である坐骨神経が圧迫されて、臀部、ハムストリング、ふくらはぎ、かかと、さらにはつま先に至るまで痛みを引き起こす。この類の痛みは、慢性的な緊張によって起こるので、梨状筋をストレッチして緊張をほぐすようなアーサナが一般的な治療となる。また、習慣的に梨状筋のハンモックによりかかって、そのロープが緊張してはりつめたままにならないように、アーサナによって骨盤の位置を再調整する術を学ぶこともできる。

アーサナ

さらに、梨状筋は、仙骨を支えるためにある程度の硬さもないと、その役割を果たすことができない。生まれつき、あるいは長年の極端なストレッチによって仙骨の靭帯が過可動になっている場合、梨状筋が仙腸関節を安定させるのはより困難となる。
自分の仙骨の靭帯が過可動であるかどうかは、ポーズを観察すれば判断できる。骨盤がつねに、そして過度に前傾し、腰に深いくぼみができている場合、仙骨は、仙腸関節を引き締めて安定させる梨状筋のハンモックの支えなしで傾いている状態にある。つまり、ハンモックがいつも片方向に傾いていて、今にもひっくり返りそうにぐらついているようなものだ。それはひじょうに不安定な状態であり、この種の不安定性は腰に刺すような痛みを引き起こすことがある。

梨状筋を働かせよう

梨状筋に本来の仕事をさせるには、慢性的な緊張と弛緩の間のバランスがとれるように骨盤のアラインメントを整えることが重要だ。そのためには、坐骨に意識を向ける必要がある。ちょっと試してみよう。固い椅子に背筋を伸ばして座り、自分の坐骨を感じてみよう。その状態から骨盤を後ろに傾けて沈ませていく。上体を後ろに倒すにつれて坐骨が前にスライドし、尾骨が下に入り込むのが感じられるだろうか。このとき身体は、梨状筋のハンモックと腰の靱帯に沈み込むので、梨状筋や坐骨周辺の深層筋に、緊張やつかまれた感じを覚えるかもしれない。
次は骨盤を逆方向に傾けてみよう。腰を反らせながら坐骨を後ろに引いていき、坐骨の先端で座るようにする。腰と鼠蹊部が硬くなる感覚を覚えるだろうか。最大限に傾けると、股関節屈筋群は骨盤の前傾に伴って収縮される。さらに、梨状筋を含む坐骨の外側や股関節の裏側の筋肉が不活発になっていることにも気づくだろうか。骨盤の前傾によって、腰は引き締まるものの、仙骨関節は不安定で支えられていない感じがするだろう。

鼠蹊部

両極端に骨盤を動かした後は、その中間点を見つけよう。尾骨を重くして下に下げ、坐骨の中心に体重がのるようにする。こうすることで、尾骨と仙骨が梨状筋の筋膜ハンモックにおさまり、仙腸関節をしっかりと支え、安定させることができる。また坐骨から上体がまっすぐに伸びる感覚とともに下腹部が引き上がり、ウエストラインの下の仙骨にかかる筋肉がサポートされる。このように意識して練習することによって、骨盤を正しいアラインメントに導き、すべての筋肉、とくに梨状筋のバランスが整う。
注意してほしいのだが、尾骨は重く下げるのであって、「たくし込む」のではない。ある程度ヨガを練習していると、とくに後屈では腰や仙骨への圧迫を防ぐために、尾骨を「たくし込む」ように教わるかもしれない。だが、今回の練習でそれを行うと、尾骨が後傾して仙骨の安定を欠いてしまう。さらに股関節において梨状筋が締め付けられてしまう――今回は締め付けたくないのだ。「たくし込む」動作から離れて、両脚をしっかりと根付かせるだけで、梨状筋は本来の役割を発揮し、自分のハンモックで仙骨をサポートして仙腸関節を安定させられるようになる。この動作は、とくに前屈や後屈を深める際に効果的で、ねじりのポーズにおいても仙腸関節でのねじれを解消できる。
この意識的な骨盤のアラインメントは、立ちながら行うことも可能だ。ふと立ったときに、骨盤のバランスがとれている代わりに、尾骨が「たくし込まれ」、鼠蹊部が前に押し出されて両足が外に向いていないだろうか。このとき、太腿上部は外に開いており、梨状筋は縮まっている。仙骨はハンモックに重くのしかかり、大腿骨頂のちょうど後ろ側の腰の外側で梨状筋が締め付けられている。お尻の外側に深いくぼみがあらわれていたら、まちがいない。この状態で梨状筋が締め付けられると、とくに腰の外側に負担がかかり、仙腸関節や腰椎を圧縮してしまう。

鼠蹊部

座りながら最適な骨盤のアラインメントを見つけたように、立ちながらでもそれは可能だ。ヨガポーズを行う際に、お尻や股関節に余分な緊張をかけないで、梨状筋が仙骨を安定させるスイートスポットを見つけられれば、軽さとエネルギーがもたらされる。アラインメントが整えば、無理に頑張らなくても脚がしっかりと根付いている感覚が得られるだろう。立位のポーズで梨状筋のための最適なアラインメントを見つけるために、まず両膝をロックさせずに少しだけ曲げ、骨盤をやや前傾させて腰を深く反らせ、鼠蹊部を緩める。腰を後ろに引きながら、かかとの中心が床に根付くように体重をのせていく。同時につま先を広げ、足の四隅に等しく体重をかけて接地させる。それから両脚をまっすぐに伸ばし、みぞおちをゆっくりと引き上げながら尾骨を下げる。尾骨が梨状筋のハンモックに軽く腰掛けている様子を想像しよう。ここで尾骨をたくし込んでしまうと、このスイートスポットから外れて、鼠蹊部と股関節屈筋が締め付けられる。脚の骨がしっかりと根付き、土踏まずと骨盤底が軽く引き上がる感覚が得られたら、それがスイートスポットだ。骨盤のアラインメントが整い、梨状筋はしっかりと仙骨を支えている。

鼠蹊部

梨状筋を正しく動かすために欠かせない臀筋

梨状筋と仲良くなるには、このように坐骨と足をガイドにして、体重のかかり具合やアラインメントの感覚を利用しながら、骨盤を微調整する練習をするとよいのだが、これだけではコツをつかみにくいかもしれない。実は、梨状筋を陰で支えながら、安定感と軸をもたらしてくれる第三者がいる。それは臀筋だ。
臀筋によって、外旋と外転という梨状筋の副次的な動作がしっかりと支えられると、梨状筋は仙腸関節を安定させるという本来の機能をより発揮できる。梨状筋を助けるために臀筋を一緒に働かせる際の大事なポイントは、外転という動作だ。脚と腰に関しては、外転とは足を外側に向けて、体正中線から遠ざけることを言う。外転は実際に動く動作でも、等尺性筋活動による運動(アイソメトリック運動)でも可能だ。アイソメトリック運動においては、臀筋を回転させることで股関節を安定させる。例えば、片脚でバランスをとる時、臀筋は脚を横にもち上げる時と同じように収縮する。だが、立っている脚は動かせないので、自然と骨盤が引き上がり平行になる。効果的に臀筋を使うほど、梨状筋は楽に仙腸関節を安定できるようになる。だが、臀筋がうまく働かないと、骨盤はぐらつき、腰が傾いて、支えのない梨状筋は緊張する。日常生活で座っているとき、立っているときに、最適なアラインメントを心がけるようにすると、それは感覚として身体に刻まれ、ヨガポーズでも実践することができる。また、臀筋に外転の仕事を引き受けてもらい、梨状筋が本来の機能をうまく果たせるようになれば、なおさら効果的だ。前屈や後屈では、腰部に快適さとスペースが感じられ、立位やバランスのポーズでは、体幹に軽さと安定感を見出すことができるだろう。

体幹

1.ウッターナーサナ(立位前屈)

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photo by Lisa Wiseman

ウッターナーサナで外転を練習するときは、臀筋を利用して、大腿骨を中央に引き寄せて股関節に安定させる。こうすることで、支えるために梨状筋のハンモックに寄りかかる習慣をなおすことができ、腰の緊張を軽減しながら、より楽に前屈が行えるようになる。

HOW TO

まず腰幅で立つ。膝をわずかに曲げて太腿を後ろに引き、足の間でマットを広げるように力を入れる。膝はまっすぐ前に向けたまま、太腿が開かないようにする。お尻が内側に引き込まれる感じがするほど足に力を入れないこと。むしろ、股関節上部の筋肉が太腿の付け根あたりから外側に引っ張られて、股関節から離れるような感覚を得てほしい。このように腰が広がった状態が外転だ。仙骨や、ウエストラインの下、腰のあたりが若干広がる感じや、解放感もあるだろう。どのぐらい外転させればその解放感が得られるかというのは、人それぞれだ。腰やハムストリングが硬い人は、両膝を内側に向けずに、かかとを外に押し出すようにしてアイソメトリック(静止したまま力を入れる)の動きを取り入れてみよう。
この状態を保ちながら、前屈に入っていく。最初に骨盤上部を少し前傾させて、腰のアーチを深め、体重がかかとの中心にのるまで腰を後ろに引く。両膝を少し曲げて太腿を外転させ、脚の付け根から体を前に倒し、床、ブロック、もしくは椅子に手を置く。脚を伸ばしてハムストリングを完全に伸ばしてもよい。ただし、ひき続きかかとの内側を外に押し出すようにして、脚と腰の外側のストレッチを深めること。この動きによって梨状筋だけでなく他の回旋筋も解放できる。ひじょうに柔軟性が高い人は、外転を保ちながら、かかとの外側を根付かせるようにしよう。梨状筋のハンモックが引き締まって仙骨を安定させるので、骨盤が極端に前傾してハムストリングを引っ張りすぎるのを防ぐことができる。上体を起こすときは、腰に負担をかけないように、膝をやや曲げ、アイソメトリック運動で(実際には脚を動かさないが)太腿を横方向に広げるようにする。

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