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会社員→フリーランスに転身|いしかわゆきさんに聞く「生きづらい世界をいい感じに泳ぐ」思考のヒント

「生きづらい世界をいい感じに泳ぐ」をテーマに活躍中のフリーランスライターいしかわゆきさんにインタビュー。ご自身の書籍『ポンコツなわたしで、生きていく。〜ゆるふわ思考で、ほどよく働きほどよく暮らす〜(技術評論社)』を基に、フリーランスの心構えから人間関係のコツまで、いしかわさん流のノウハウを取材しました。自分にフィットする環境を模索中の方にとってヒントになるはず。

ーー元々会社員だったいしかわさん。ご自身がフリーランスに向いていると思ったきっかけは何だったのでしょうか。

いしかわさん:フリーランスに向いているというよりは、会社員に向いていなさすぎるんですよね。企業に務めていた時、そう感じた瞬間が何度かあって。まず、絶望的に朝が苦手で…。学生時代もアルバイトで、3回寝坊してクビになったりとか。大学の授業に毎回遅刻するだとか。当時は実家暮らしだったので、親に起こしてもらっていたんですけど、そうやって決まった時間で動けない人間だったんです。新卒で営業職で働いていた時期は、布団の中から出勤報告をしていたこともありました(笑)。会社員として守るべきルールを絶望的に守れなかったんです。

自分の「やりたくない」を見極める

ーー苦手なことがたくさんあったんですね。

いしかわさん:それと、やりたくないと思うことが結構多くて。会社員の頃からライティングや編集の業務を受け持っていたのですが、集中して書いている最中に会議が始まったり、同僚に声をかけられたり、違うことに対応する状況ってあるじゃないですか。そういう時に目の前の作業を中断しなければならないのがすごく嫌で。あと、会社に務めていると業務内容が変わっていくことってあるじゃないですか。元々は記事のライティングを担当していたけど、会社の方針が変わって編集に回ることになるなど、やりたいことがズレていく状況が耐えられませんでした。

あとは、会社務めに対する意識ですかね。わたしの場合は、昇進したくないと思っていましたし、後輩に仕事を指導する立場になりたくないとか、評価されることに興味がないとか、そういった基本的な会社員としてのマインドが欠けている感じがして。総合的に自分を客観視すると、フリーランスに向いていたのではなく、絶対的に会社に向いていなかった。そんなことを頭に思い浮かべながら当時は仕事していました。

ーーそれって、「組織」に向いていないということなんですかね?

いしかわさん:そうかもしれません。やっぱり大勢の人が同じ方向を向いて働く以上、一定の決まりがありますよね。そして、基本的にはそれに対して嫌だなんて言えないじゃないですか。組織内ではやりたいことよりもやるべきことが優先されるし、いろいろなルールが決められていたり、そういう前提が自分に合っていないと感じていました。

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photo by 書籍『ポンコツなわたしで、生きていく』(技術評論社)

3つの会社を渡り歩いて

ーーいしかわさんは、これまで3社を経験されていますが、どのような理由で転職をされていたのでしょうか?

いしかわさん:最初に務めた会社では営業をしていたのですが、そこでは毎日9時出社18時退社、作業はアナログ形式がメイン。そういうきっちりした感じが自分に合わなかったと振り返っています。業務内容に関しても、人と対面で話すことは向いていないと感じました。でも、その後に広告代理店に転職してみると、クリエイターの方たちは朝が遅めなのか10時ごろに出社しても誰も来てないんですよ。「これは良い!」と思って(笑)。

ただ、やっぱりそこは変化の激しい環境。取り組む内容が常に変化していくわけです。なのでさらに理想的な環境に近づけるために、次はメディア関係に移りました。そうすると、自分が磨きたいスキルを磨けたり、やりたいこともある程度はできるようになったけど、完全に自由になるわけではなくて。とはいえ、最後にいた職場は、おそらく「会社」という枠の中で最大級の自由を享受できていたはずなんです。にもかかわらず、合わないと感じるということは、そもそも会社員自体が無理なんだ、と思い至りました。

同僚と話していてもどこかモチベーションが違っていると感じていました。彼らはサービスを大きくしたいとか成長させていきたいとか、どんどん昇進したいとか、あるいは契約社員なら正社員を目指すとか、モチベーションが上に上に向いている感じで。でも、わたしの場合は記事を書きたいという部分に対して意識が向いていたんですよね。元々ライティング業務を担当していたのに、後に編集に回ることになった時も、本当は記事を書く側でいたいのにな…と思ってました。

フリーランスとの出逢い

いしかわさん:そんな感じで、会社員時代はいろいろと環境を変えながらフィットする場所を模索していました。でも当時は自分の中にフリーランスという選択肢さえありませんでした。身近にいなかったし、単純にフリーランスのことを知らなくて選択肢になかったんです。

ところが、編集者として外注先のフリーランスライターの方とお仕事したり、社会人コミュニティに入ってフリーランスの方と知り合ったことで、印象が一気に変わりました。それまでは、失礼ながらフリーランスはフリーターのようなものだと思っていたんです。でも、深く接しているうちに、だんだん彼らの生活が見えてきて。ひもじい思いをすることもなく会社員と同じぐらい稼いで生きていると分かったことで、「フリーランス」がリアルな選択肢として浮かび上がってきました。

ーーなるほど。コミュニティに入ったことが転機になったんですね。どんなことを意識してコミュニティに入ったんですか?

いしかわさん:社会人になってからは、会社のメンバーと大学時代の友達としか会わなくなくなり、基本は仕事の話しかしない日々を過ごしていたんです。とても狭い世界の中で生きていると感じていました。そんな時に、SNS上で個人で活躍している人を見ていると、彼らは知り合いが多くていろいろなコミュニティに入っているという印象を受けました。丁度当時は広告代理店に勤めていた頃で、個人で仕事してみたいとか自分で新しいチャレンジをしたい気持ちが強かったんです。そこで、サードプレイスのような位置づけで新たな環境に踏み込んでみようと思い、コミュニティに入りました。会社でも家でもなく、全く接点のない職業の方や、異なるバッググラウンドを持っている人たちと出会って、自分を確立させていきたかったんです。

ーーその延長線上で個人の仕事も生まれたらいいなと考えていたんですか?

いしかわさん:そうですね。当時はSNSで活躍している人たちがどんなルートで個人の仕事をゲットしているのか、すごく疑問で(笑)。その糸口を見つける意味でも入ることを決めました。

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photo by 書籍『ポンコツなわたしで、生きていく』(技術評論社)

会社員を辞めて不安に苛まれる日々

ーーフリーランスになりたての頃、不安はありましたか?

いしかわさん:うーん、むしろ、不安になるのが嫌だったので、まずは副業で会社員分のお給料を稼げるようになってから、独立しようと思いました。それはフリーランスの知り合いからも、最初のうちはできれば会社員としてお給料という形で収入を得つつ、並行して副業として個人の仕事をするのがベスト、とアドバイスされていたからです。

わたしもギリギリまでその状態で頑張るつもりだったんですけど、副業に圧迫されすぎて10円ハゲができてしまい…。そのタイミングで限界を感じて会社を辞め、独立しました。でも、こんなにも準備したにも関わらず、辞める前日は怖くて涙が出てきたんですよ。会社に所属していたら、基本的に会社が責任を取ってくれるじゃないですか。別に仕事が出来てなくても、先輩が肩代わりしてくれたり、最低限のことは会社が守ってくれたり。そういう安心感があったからこそ、その環境を離れて完全に自分の名前でやっていかなきゃいけない状態になるのが怖かった。

結局、独立して2か月間ぐらいはずっと不安でした。その時は忙しく動き続けることで不安をごまかしていて、もはや一人ブラック企業状態。同僚と呼べる存在もいないし、常に一人での作業なので、孤独を感じることも多かったですね。

ーーもしも、今のいしかわさんが会社を辞める頃の自分にアドバイスするとしたら、何を伝えますか?

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